イーライリリー1兆ドル企業に 製薬企業初
イーライリリー(LLY)は先週、時価総額1兆ドルを突破し、AppleやMicrosoftなどと同じ「1兆ドル企業」の仲間入りをしました。製薬会社として初の1兆ドル企業という快挙を成し遂げ、多くの投資家の注目を集めています。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)目次
インスリンのパイオニアから1兆ドル企業へ
イーライリリーってどんな会社?簡単に糖尿病と肥満症薬が成長を牽引
次はアルツハイマー薬で勝負をかける
日本でも製造体制を整え中 競合リード狙う
インスリンのパイオニアから1兆ドル企業へ
製薬開発の老舗企業、イーライリリーの株価は上昇し、1株あたり1,000ドルを超えました。
肥満症・糖尿病向けのGLP-1薬*への期待を背景に上昇を続け、先週21日に一時1.7%上昇し、時価総額が1兆ドルに到達しました。
とくに、ゼップバウンドとマンジャロへの期待が投資家の「買い」を引き寄せており、今年だけで株価は約40%上昇しました。2025年7〜9月期の3ヶ月間には、この2剤の売上だけで約100億ドルに達したと報告されており、これが1兆ドル評価を裏付ける実績として意識されています。
*GLP-1薬とは、体内のホルモン「GLP-1」の働きを強めて、血糖値を下げたり食欲を抑えたりする注射や飲み薬のことです。もともとは2型糖尿病の治療薬として使われてきましたが、体重減少効果が注目され、肥満症の治療薬としても広がっています。
以前発表された決算では、成長が「値上げ」ではなく「売れる量が増えたこと」によるものだという点だったことがポイントです。販売数量は62%増えており、世界中で薬が足りなくなるほどの需要があることがうかがえます。利益も大きく伸び、1株利益はアナリスト予想を約2割上回りました。売上が増えた分だけ、しっかりと利益も増える“稼ぐ力”がついてきていると言えます。
その結果、市場はイーライリリーを「安定したディフェンシブ銘柄」というより、成長性の高い大型グロース株として見るようになりました。
イーライリリーってどんな会社?簡単に
イーライリリー・アンド・カンパニーは、1876年に米インディアナ州インディアナポリスで創業された老舗の製薬会社です。もうすぐ創業150年を迎える長い歴史を持ち、「糖尿病の会社」として知られてきました。
1923年、世界で初めてインスリン製剤を実用化し、大量生産に成功したのがイーライリリーです。この出来事をきっかけに、同社は100年以上にわたって糖尿病治療の中心的なプレーヤーとして走り続けてきました。今では糖尿病だけでなく、がんや自己免疫の病気、アルツハイマー病など、治療が難しい病気の薬も開発しています。
糖尿病と肥満症薬が成長を牽引
今のイーライリリーの成長をけん引しているのが、糖尿病と肥満症向けの新しいタイプの薬です。その代表が、2型糖尿病向けの「マンジャロ(Mounjaro)」と、肥満症向けの「ゼップバウンド(Zepbound)」です。
これらは、食事で上がった血糖値を下げたり、食欲を抑えて体重を減らしたりする働きを持つホルモンの力を利用した薬です。従来の薬と比べて、血糖値の改善や体重減少の効果が大きいとされており、世界的なニーズが急速に高まっています。
2025年第3四半期には、マンジャロとゼップバウンドを合わせた売上が四半期だけで100億ドルを超えました。これは、イーライリリー全体の売上の半分以上にあたります。マンジャロは2型糖尿病の薬として前年同期から売上が倍増しました。ゼップバウンドも発売から2年足らずで急成長しており、肥満症治療薬としての存在感を一気に高めています。これまで供給が追いつかなかった状況が改善し、待っていた患者さんの手元に薬が届き始めたことも、成長を後押ししています。
ライバルは、デンマークのノボ・ノルディスクです。同社も同じような仕組みの薬を持っていますが、現在はイーライリリーの製品のほうが「体重がより落ちやすい」「供給が回復してきている」といった点で優位と見られています。医師や患者にとって、体重がどれくらい減るかは非常にわかりやすい指標であり、その点がシェア拡大につながっています。
日本市場での広がりも注目されています。日本は欧米ほど肥満人口は多くありませんが、2型糖尿病の患者は多く、マンジャロはそうした患者さんの特性に合った薬として受け入れられています。田辺三菱製薬との提携により、開業医レベルまでしっかり情報が伝わり、短期間で高いシェアを獲得しました。今後、肥満症への適応拡大や処方ルールの緩和が進めば、日本でも「糖尿病+肥満症」という二つの領域で存在感が増していく可能性があります。
次はアルツハイマー薬で勝負をかける
イーライリリーの強みは、現在の主力製品に満足せず、次の成長に向けてすでに準備しているところにあります。その代表が、経口薬「オルフォルグリプロン」と、アルツハイマー病薬「キスンラ(Kisunla)」です。
オルフォルグリプロンは、1日1回飲むタイプの血糖・体重コントロール薬です。今の主力であるマンジャロやゼップバウンドは注射薬ですが、オルフォルグリプロンは飲み薬として開発されています。従来の同種の飲み薬は「起きてすぐ、何も食べていない状態で飲む」「その後しばらく飲食しない」といった面倒な条件がありましたが、オルフォルグリプロンはそうした制約を減らすことを目指しています。
また、錠剤として大量生産しやすく、冷蔵も不要なため、世界中に届けやすいという強みがあります。注射が苦手な人や、冷蔵設備が十分でない国・地域にも使いやすい薬になり得ます。臨床試験では、血糖値を下げる効果や体重減少の効果が確認されており、2026年ごろの発売が見込まれています。
一方、キスンラはアルツハイマー病を対象とした点滴の薬です。脳内にたまった「アミロイド」と呼ばれる物質を減らすことで、病気の進行を遅らせることを狙ったものです。
大きな特徴は、「ずっと投与し続ける」のではなく、「脳の状態が改善したら治療を終える」仕組みになっていることです。一定の間隔で点滴を続け、画像検査でアミロイドが十分に減ったと判断された時点で投与を終了できます。臨床試験では、多くの患者が1〜1年半ほどで「終了ライン」に達したとされています。
これは、患者さんやご家族の負担を軽くするだけでなく、医療費を支える国や保険会社にとっても、費用の見通しが立てやすいという点で意味があります。日本でもすでに承認され、今後は実際の診療現場でどう使われていくかが注目されています。ただし、診断や点滴を行う専門施設の数には限りがあり、治療を広げるには医療体制の整備という課題も残されています。
日本でも製造体制を整え中 競合リード狙う
こうした薬を世界中に安定して届けるには、製造と物流の体制が欠かせません。イーライリリーは、2020年以降に総額500億ドル以上を投じて、アメリカ、ヨーロッパ、日本など各地で工場の新設・増強を進めてきました。
日本では、神戸の工場に新しい包装ラインや検査設備を導入し、マンジャロやゼップバウンド、キスンラなどの仕上げ工程を国内で行えるようにしています。これにより、日本向けの供給を海外のトラブルを回避しやすい構造にしています。アメリカやヨーロッパでは、オルフォルグリプロンのような飲み薬専用の大規模工場の建設も進行中です。承認されしだい、すぐに大量供給できるよう準備している形です。
今後10年ほど、糖尿病・肥満症向けの新薬市場は、イーライリリーとノボ・ノルディスクの2社が中心となる構図が続くとみられています。
ノボ・ノルディスクは、デンマークに本社を置く大手製薬会社で、イーライリリーと同じく糖尿病や肥満症の治療薬で世界トップクラスの存在です。もともとはインスリンなど糖尿病の薬で成長してきた会社で、「糖尿病といえばノボ・ノルディスク」と言われるくらい、この分野では長い実績があります。
現時点では、注射薬マンジャロ/ゼップバウンドの勢いと、飲み薬オルフォルグリプロンの先行性により、イーライリリーが一歩リードしているという見方が多くなっています。
一方で、薬価引き下げの動きや、将来の特許切れ、他社の新薬登場といったリスクも存在します。イーライリリーは、複数の新薬候補を同時に育て、大規模な製造投資も並行して進めることで、こうした変化に対応しようとしています。
インスリンの時代から始まり、糖尿病・肥満症薬、アルツハイマー病薬へと広がってきたイーライリリーの事業は、今まさに大きな転換期にあります。株式市場が同社を1兆ドル企業として評価したのは、その長い歴史と現在の成長、そして今後の可能性が重なり合った結果だと言えるでしょう。イーライリリーがどのように次のステージに進んでいくのかを見ていくことが大切になりそうです。
参考文献
Roy, M.「Lilly becomes first drugmaker to hit $1 trillion valuation on weight-loss demand.」Reuters, 2025年11月21日(2025年11月24日閲覧)
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/lilly-becomes-first-drugmaker-join-trillion-dollar-club-weight-loss-demand-boom-2025-11-21/Eli Lilly and Company.「Lilly reports third-quarter 2025 financial results, highlights R&D pipeline momentum and raises 2025 guidance.」Investor Relations News Release, 2025年10月30日(2025年11月24日閲覧)
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-reports-third-quarter-2025-financial-results-highlights-rdCleveland Clinic.「GLP-1 Agonists.」Cleveland Clinic(2025年11月24日閲覧)
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/13901-glp-1-agonistsEli Lilly and Company.「History | Milestones of Caring & Discovery.」Lilly 公式サイト(2025年11月24日閲覧)
https://www.lilly.com/about/history
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