量子コンピュータ銘柄5日で株価2倍 実用化に期待
量子コンピュータ関連銘柄が急騰!D-Waveの発表が投資家の期待を集め、株価が2倍以上に。本記事では、量子コンピュータの基礎、急騰の背景、今後の展望について詳しく解説します。
先週、量子コンピュータ関連銘柄は大きく上昇し、D-Waveの株価は2倍以上になりました。
本記事では、米国投資アプリを運営するWoodstock経済部が
量子コンピュータ関連銘柄がなぜ急騰したのか
量子コンピュータとはそもそも何か
量子コンピュータの将来性
についてわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
量子コンピュータ関連銘柄が急上昇
一時は株価低迷も…NVIDIA CEOの発言から一転そもそも量子コンピュータとは何か
従来のコンピュータとの違い
アニーリング型とゲート型実用的問題での量子優越性達成
大手IT企業も続々参入 2030年実用化は現実味を帯びるか
投資と経済効果の見込みまとめ
量子コンピュータ関連銘柄が急上昇
先週量子コンピュータ開発企業であるD-Wave Quantumの大きな研究発表がありました。同社は「量子コンピュータが従来の超高性能スーパーコンピューターをはるかにしのぐ性能を示した」と報告し、これを「実用的問題における量子優越性(Quantum Supremacy)の獲得」と発言しました。
量子超越生とは、従来のコンピュータが時間がかかり過ぎて(実質的に)解けない問題を、量子コンピュータが実用可能な時間内に解けることを証明することです。
D-Waveの報告によると、従来のスーパーコンピューターでは100万年単位が必要になる計算を、同社の量子コンピュータではわずか数分で結論を導き出すことが可能になるという試算を出しました。
この発表により、同社の株価は2倍以上に急騰しました。
量子コンピュータの「量子優越性」という言葉は、2019年にGoogleが初めて実証したと報告して以来何度か議論されてきましたが、D-Waveは「今回の研究は実際に産業や学術研究に役立つ問題での大幅な性能差を示している」と主張し、投資家の期待を一気に高める結果となりました。
一時は株価低迷も…NVIDIA CEOの発言から一転
それまで量子コンピュータ関連銘柄は伸び悩んでいました。というのも、AI用の半導体分野で世界をリードするNVIDIA(エヌビディア)のCEO、ジェンスン・ファン氏が「使える量子コンピュータは、あと20年は先」と懐疑的な見解を示したことで、「やはり量子コンピュータはまだまだ先の話」との空気が広まり、投資家が敬遠していたのです。
量子コンピュータには「大規模化が難しい」「エラー訂正技術が確立されていない」といった課題が残されており、完全な実用化には高いハードルがあるのは事実です。
しかし、先週のD-Waveの発表を機に市場の雰囲気が変わり、同社だけでなく、アメリカのQuantum Computing(QUBT)、Rigetti Computing、IonQなど、量子コンピュータ開発を手掛ける企業の株価がそろって急騰しました。
そもそも量子コンピュータとは何か
従来のコンピュータとの違い
私たちが普段使っているパソコンやスマートフォンは、「0か1か」という2進数のビット(bit)を基本単位とする「クラシカルコンピュータ」です。一方で、量子コンピュータは量子力学の原理を利用し、「0と1が同時に存在する(重ね合わせ)」や「量子もつれ」といった特性を持つ量子ビット(qubit)を扱います。
この性質を活用すると、複数の状態を同時並行で計算できるため、クラシカルコンピュータでは天文学的時間がかかるような大規模かつ複雑な問題を、格段に効率よく解く可能性があるとされています。たとえば、新薬候補の分子設計や材料開発、金融商品のリスク解析、物流最適化など、産業界での応用が期待されています。
アニーリング型とゲート型
量子コンピュータには大きく分けて「アニーリング型」と「ゲート型」の2種類があります。D-Waveが採用しているアニーリング型は、ある特定のパラメータ(エネルギー)をゆっくり変化させることで最適解を探索する方式で、特に組合せ最適化問題に強みを発揮します。
一方、GoogleやIBM、Rigettiなどが開発を進めるのは「ゲート型」と呼ばれる方式で、汎用性が高いとされていますが、技術的なハードルがアニーリング型よりもさらに高いと言われています。エラー訂正や量子ビットの増やし方など、多くの研究開発の壁があり、それらを乗り越えると理論的には非常に強力な汎用量子コンピュータを実現できる可能性があるのです。
実用的問題での量子優越性達成
D-Wave Quantumが実証したのは、「磁性材料シミュレーションの高速化」です。磁性材料は電子機器や医療用画像撮影、超伝導体モーターなど幅広い分野で利用されるため、より詳細なシミュレーションを短時間で行えるようになることは大きな意味を持つとされています。
D-Waveの論文(科学誌『Science』に掲載)によると、以下のような成果が報告されました。
数百万~数千万もの変数が絡み合う複雑な磁性材料の特性シミュレーションを、高精度で短時間に実行
世界最高峰のスーパーコンピューターで同様の計算を行うと、100万年単位の時間が必要との試算
既存のクラシカルコンピュータのアルゴリズムとは一線を画す速さとエネルギー効率を示唆
もちろん、この「量子優越性」の主張には一部の専門家から反論も出ています。クラシカルコンピュータの新しいアルゴリズムや手法ならば、そこまでの時間を要さないという声もあるのです。
ただしD-Waveは「われわれの結果は、既存技術では再現不可能」と再反論しており、論争はしばらく続くでしょう。いずれにせよ、投資家や業界関係者が「いよいよ量子コンピュータが実用化に近づいたのでは」と評価したことが、株価上昇の最大の要因といえます。
大手IT企業も続々参入 2030年実用化は現実味を帯びるか
IBMやGoogle、Amazonなどが技術開発を加速
D-Waveのような先端企業だけでなく、世界の大手IT企業も量子コンピュータ開発にしのぎを削っています。
米IBMは2030年ごろの大規模量子コンピュータの実用化を目標に掲げ、新しい量子チップ「ヘロン」の開発を進めています。IBMのCEOアービンド・クリシュナ氏は、米テキサス州オースティンで開かれた大規模イベント「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)」にて「あと4年もすれば驚くような成果を目にすることになる」と意欲を示しました。
また、Googleは2024年末に開発した新型チップ「ウィロウ」を用いて、従来ならば10の25乗年かかる計算を5分以内で実行したと報告しています。
Amazonも専用チップ「オセロット」の試作品を発表し、エラー訂正にかかるコストを最大9割削減できる可能性を示唆。
さらにマイクロソフトは特殊素材を使った方式で安定性を高める研究を進め、2025年2月に新たな成果を公表するなど、「量子コンピュータ開発競争」は激化の一途をたどっています。
投資と経済効果の見込み
ボストン・コンサルティング・グループの試算では、2040年に量子コンピュータがもたらす経済効果は世界全体で最大8500億ドル(約125兆円)に達すると言われます。
この巨大な市場規模を背景に、ベンチャーへの投資も活発化しており、調査会社ピッチブックによると2024年は前年の1.8倍となる17億6600万ドルが世界中で量子関連スタートアップに投じられました。2025年に入ってからわずか数カ月でも、その4割近くに達しているという報告もあります。
量子コンピュータが抱える課題
急速に盛り上がる量子コンピュータ分野ですが、実用化に向けては依然として多くの課題があります。とくに重要なのが「エラー訂正」と「スケーラビリティ(大規模化)」です。量子ビットは外部の微小なノイズや振動にも影響されやすく、誤動作(デコヒーレンス)を起こしやすい性質を持っています。十分な計算精度を保つためには、量子ビットを極低温に保つための装置や、エラー率を下げるための複雑な回路設計・ソフトウェアの改良が必須です。
また、ゲート型の量子コンピュータでは、数十~数百の量子ビットを「理想的に制御」するだけでも至難の業です。安定的に動作する量子ビットを数千、数万単位で実装できるようになるには、まだまだ技術革新が求められます。NVIDIAのCEOが「量子コンピュータが実用化するには少なくとも20年かかる」と述べたのは、こうした技術的な障壁が大きいからにほかなりません。
まとめ
今回の量子コンピュータ関連銘柄の急上昇は、D-Wave Quantumによる研究成果が大きく報道され、投資家の期待が一気に高まったことが要因です。とはいえ、実用化にはまだ数年~十数年規模の時間が必要との見方が強く、現時点での株価上昇が業績面でただちに裏付けられるわけではありません。実際、D-Waveをはじめとして多くの量子コンピュータ企業はまだ赤字経営が続いており、研究開発投資と市場の期待で株価が支えられている状況です。
一方、IBMやGoogle、Amazon、Microsoftといったテックジャイアントが量子コンピュータ開発を本格化させている事実は、技術の将来性が高く評価されていることの証ともいえます。今後、エラー訂正技術や大規模チップの開発などで一段と進歩が見られれば、そのインパクトは計り知れません。
この大手の参入の状況を踏まえると、いずれは何らかの形で社会を大きく変革することになると言えるのではないでしょうか。
参考文献
Rob Lenihan, "Major update sends quantum computing stocks surging," Yahoo Finance, March 15, 2025. https://finance.yahoo.com/news/major-sends-quantum-computing-stocks-202715976.html
Belle Lin, "D-Wave Claims ‘Quantum Supremacy,’ Beating Traditional Computers," The Wall Street Journal, March 12, 2025. https://www.wsj.com/articles/d-wave-claims-quantum-supremacy-beating-traditional-computers-155ca634
「量子計算機、2030年実用化へ進展 計算ミスの抑制にメド」日本経済新聞, 2025年3月15日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN080QF0Y5A300C2000000/
(本記事は公開情報をもとに作成しています。投資は自己責任のもと、最新情報を確認したうえで検討することをお勧めいたします)
投資×SNSで米国マーケット情報をゲットしよう!
「投資はまだ勉強してから...」と勉強をしっかりしてから取り掛かろうと思っていたら一年が終わっていた...という方も多いかと思います。投資って難しそうだし、損をしたくないという思いからそのような決断になるのは当然です。
しかし、投資に関して気軽に質問できる場があればそのハードルは大きく下がるのではないでしょうか。
woodstock.club(ウッドストックアプリ)を活用すれば、米国市場に関する情報を集めると同時に、実際に米国株を200円からコツコツと始めることができます。
米国市場に参加している投資家たちの生の声を聞けたり、トレンドを抑えることができます。
さらに、ウッドストックアプリではリアルタイムに他のユーザーの売買をチェックすることができます。この機能を使えば、まさしく「今、この瞬間何がトレンドなのか」が一目でわかります。
ウッドストックアプリは、以下のような特徴があります。
200円という少額で始めることができる。
SNS機能でリアルタイムな意見を集められる
他のユーザーがどんな株を売買しているのかリアルタイムで確認できる
他のユーザーのポートフォリオをチェックできる
ユーザーの半数はZ世代 などなど他にも盛りだくさん!
弊社のwoodstock.club(ウッドストック)アプリは無料で始めることができ、口座解説もたったの2分ちょっとで完了します。
今年こそ新しいことを始めたい!と思っている方は、是非チェックしてみてください👇