スタバ 全米ストライキ 拡大続く
全米のスターバックスで続く無期限ストライキが、11月28日に参加店舗120店超へ拡大しました。「契約なければコーヒーなし」を掲げる労働組合と本社の溝は、なぜ埋まらないのでしょうか。対立の背景と、ブランドや業績への影響を整理して解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)目次
ストライキ、ブラックフライデーにさらなる拡大
労働組合と関係者の動き
政治家たちもストに反応スターバックスの本社の対応
ブランドイメージと株価への影響
株価への影響は?
ストライキ、ブラックフライデーにさらなる拡大
11月13日に始まったスターバックスの労働者による組合のストライキは拡大しています。
同社の株価への大きな影響はみられないものの、ストが長期化すれば企業イメージに影響があるのではないかと懸念されています。
まず、今回のストライキがなぜ発生したのか、その背景と経緯を見てみましょう。
2021年末アメリカで、ニューヨーク州バッファローの店舗で従業員が初めて労働組合を結成。これをきっかけにスターバックス各店で組合結成の動きが広がりました。
従業員たちは賃金の引き上げや安定した労働時間の確保、職場環境の改善などを求め、全国的な組合「Starbucks Workers United(スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッド)」を組織して団結を強めていきました。
しかし、スターバックス本社は長年「従業員とは直接対話するのが最善」という方針で組合化に強く反対してきました。
組合側は、組合活動に関わったバリスタの解雇や組合加盟店の閉鎖など、本社による「労組つぶし」と感じられる行為が相次いだと主張。全米労働関係委員会(NLRB)に対し不当労働行為の救済を求める申し立てを累計1,000件以上行ってきました。
こうした対立の中で、2024年には初の全米規模での労使交渉(全国的な枠組みでの団体交渉)が始まりました。約8〜9か月にわたる協議で労働条件に関する33項目の暫定合意が得られたものの、肝心の賃金や労働時間など経済面の待遇改善で両者の溝が埋まらず、交渉は同年12月に行き詰まってしまいます。
その後スターバックス側は初年度の賃上げ無し・労働時間や人員配置には踏み込まないといった内容の提案を出しました。しかし、組合側は「誠実さを欠く」として拒否。交渉決裂後も協議再開の糸口が見えないまま2025年に入り、組合側の苛立ちは募ります。
そして先月の11月13日、スターバックスの年末恒例プロモーションである「レッドカップデー」に合わせ、組合は全米同時ストライキという強硬手段に踏み切りました。この日、全米のスターバックス店舗ではホリデーシーズン開幕を祝う特別イベントとして、赤い再利用カップ(Red Cup)の無料配布が行われ、例年多くの来客で賑わう書き入れ時です。この時期に
ストライキは無期限で行われると宣言され、その後も複数週にわたり継続しています。
そして、先月28日にこのストライキの参加店舗が当初の65店から120店超へ広げたと、スターバックスは報告しました。
労働組合と関係者の動き
今回のストライキを主導しているStarbucks Workers United(SWU)は、スターバックス店舗の従業員によって結成された労働組合で、全国で550店以上・約1万1千人のバリスタを代表しています(スターバックス本社は、組合が実際には全従業員の4%程度・約9,500人に過ぎないとも主張しています)。
SWUは古参の労組「Workers United(ワーカーズ・ユナイテッド)」傘下の組織で、カフェ業界では異例の広がりを見せた草の根の組合運動として注目を集めてきました。
組合員たちは「No Contract, No Coffee(契約なければコーヒーなし)」というスローガンを掲げ、初めての労使契約(団体協約)締結を求めて声を上げています。SWUは今回のストライキを「レッドカップ反乱(Red Cup Rebellion)」と名付け、スターバックスが誠実に交渉に応じない限り、必要に応じて参加店舗をさらに増やし「会社史上最大かつ最長のスト」に発展させると訴えています。
組合側は各地のピケットライン(スト現場)からSNS等を通じて情報発信を行っており、「未来のために今立ち上がる」「従業員がいなければ店は回らない」というメッセージを次々に発信しています。
政治家たちもストに反応
この労働闘争には社外からも様々な関係者が反応しています。
政治家では、たとえばニューヨーク市のゾーラン・ママダニ次期市長やスターバックス本社の地元シアトル市のケイティ・ウィルソン次期市長といった地方政治家が「ストライキ中はスターバックスを買わない」と宣言し、組合を公然と支持しました。
また連邦レベルでも、サンダース上院議員をはじめとする多数の議員がスターバックス宛に労使交渉の早期解決を求める書簡を送っています。さらに投資家の中にも、このストライキの行方を注視し経営陣に誠実な対応を促す声があります。
長期株主の一部からは「最初の店舗が組合化してからもう4年近く経つのに、まだ契約を締結できていないのは問題だ」という指摘も出ています。従業員だけでなく外部からも注目を集めるこのストライキは、スターバックスにとってビジネス以外の側面でも重要な課題となっていると言えるでしょう。
スターバックスの本社の対応
スターバックス本社は、スト非加盟店や代替要員で運営中の店舗も含めれば全米の99%以上の店舗は通常どおり営業していると強調しています。そのため、「大半のお客様には影響が及ばず、むしろスト当日のレッドカップデーは過去最高の売上を記録した」と本社は主張しており、顧客サービス全体への打撃は限定的であるとの立場です。
本社の広報担当者は「ごく一部の従業員を代表する組合がストを選んだのは残念だ」と述べる一方で、「組合が交渉のテーブルから離れてしまったのが進展しない原因であり、我々はいつでも話し合いの場に戻る準備がある」と強調しています。
スターバックスは、今回のストに直接的な対抗措置を取るよりも、自社の労働環境の魅力を改めてアピールする戦略を採っています。
例えば「スターバックスは小売業界で最高水準の労働条件を提供しており、時給と福利厚生を合わせた平均的な補償額は1時間あたり30ドルにもなる」とアピール。その内訳として、平均時給約19ドルに加え、20時間以上の勤務で適用される医療保険・学費補助・有給休暇など充実した福利厚生を挙げ、「他社にはない手厚い待遇だ」としています。
さらにスターバックスは近年、アメリカ国内の事業立て直しに注力しており、「バック・トゥ・スターバックス(Back to Starbucks)」という社内改革プランの下、業績改善やサービス向上にも取り組んでいる最中です。
現CEOのブライアン・ニコル氏(2024年9月就任)は、大胆な経営刷新を進める一方で「対話を重視する」と表明していましたが、組合側は「ニコル氏の体制になってから交渉が後退してしまった」と不信感を募らせています。
事実、ニコル氏はニコルCEOは業績不振店舗の閉鎖やコスト削減の一環として、シアトルのフラッグシップ店を含む複数の組合加盟店を閉店する方針を提案。これが組合の反発をさらに強める結果となりました。
労使双方は「交渉に戻る意思はある」と表向きには述べていますが、お互いに相手の姿勢を批判し合っているのが現状で、2025年12月1日時点でも明確な打開策は見出せていません。
ブランドイメージと株価への影響
最後に、今回のストライキがスターバックスのブランドイメージや株価に与える影響について考えてみましょう。
まずブランドイメージですが、スターバックスはこれまで「従業員を大切にし、コミュニティに貢献する企業」として良好な企業イメージを築いてきました。環境や多様性への取り組みなどをアピールし、若い顧客層からも支持されるライフスタイルブランドとして成功を収めてきました。
しかし今回のストライキによって、スターバックスと従業員の対立がクローズアップされ、企業イメージに少なからず影を落としています。
ストライキの様子はメディアで大きく報じられ、ピケットラインの写真や「No Contract, No Coffee」というスローガンがSNS上でも拡散されました。これは一部の消費者にとって、スターバックスへの不信感や幻滅を招きかねない状況です。
特に労働者の権利擁護を重視する若年層や地域社会では、組合に共感しストライキを支持する声も多く聞かれます。地元の首長や議員が不買を呼びかける異例の事態は、スターバックスにとって大きなプレッシャーでしょう。このまま労使対立が長引けば、「社員を大切にしない企業」というレッテルが貼られ、長年かけて築いたブランド価値が損なわれる恐れもあります。
一方で、スターバックスのブランド力は依然として強く、根強いファンも多いため、これから早期に問題を解決できればブランドへのダメージを最小限に抑えることも可能でしょう。
株価への影響は?
ストライキ勃発時、株式市場はこのニュースに即座に反応しましたが、その反応は比較的穏やかなものでした。11月13日のスト開始当日、スターバックスの株価は前日比で約1%下落して引けましたが、急落といえるほどの動きではありませんでした。
これは、市場が今回のストライキによる直接的な業績への影響は限定的と判断したためと考えられます。実際のところ、ストに参加している店舗数(100店舗前後)は全米のスターバックス約17,000店のうちのごく一部であり、売上全体への影響は軽微と見積もられています。
証券アナリストからも「中国事業の再編や店舗刷新計画といった他の要因に比べれば、今回のストは現時点では収益予測を左右する決定打にはなりにくい」との分析が示されました。ただし、投資家心理という面では無視できない影響も指摘されています。
スターバックスは直近7四半期連続で米国内売上が前年割れするなど苦戦が続いていましたが、今年10月にはようやく1%の増収に転じたばかりでした。そうした経営再建途上での労働争議は、会社の先行きに対する不安材料の一つとなり得ます。
この1年ほどでスターバックス株は年初来で約10%前後下落しており、投資家は店舗リストラや原材料費高騰、経営陣の交代劇など様々な課題を懸念してきました。ストライキの長期化やさらなる店舗拡大がホリデー商戦に水を差すようであれば、これもマイナス材料として市場に織り込まれていく可能性があります。
一部では「広範囲に報じられるネガティブなニュースは、定量的な業績影響は小さくとも企業の投資ストーリーに影を落としうる」という声もあります。加えて、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する投資家層にとっては、労使関係の悪化は企業評価を下げる要因となりかねません。
自宅や職場でもない快適なサードプレイスを掲げるスターバックス。バリスタと経営陣が落ちつけるポイントは見つかるのか。今後のストライキの行方に注目が集まります。
参考文献
Tabassum, Juveria; Cunningham, Waylon. (2025-11-13). “Starbucks union baristas walk out on Red Cup Day in push for contract talks.” Reuters. URL: https://www.reuters.com/legal/litigation/starbucks-union-baristas-walk-out-40-cities-push-contract-talks-2025-11-13/
Shah, Chandni. (2025-11-28). “Starbucks workers’ union expands strike to more stores on Black Friday.” Reuters. URL: https://www.reuters.com/sustainability/sustainable-finance-reporting/starbucks-workers-union-escalates-strike-black-friday-2025-11-28/
Kelly, Sara. (2025-11-05). “An Update on Bargaining and Our Commitment to Partners.” Starbucks Press (about.starbucks.com). URL: https://about.starbucks.com/press/2025/an-update-on-bargaining-and-our-commitment-to-partners/
Durbin, Dee-Ann. (2025-11-13). “Starbucks workers kick off 65-store US strike on company’s busy Red Cup Day.” AP News (The Associated Press). URL: https://apnews.com/article/starbucks-workers-strike-stores-union-6d9a5c8761fb7a251cb9bf7c13908877
Starbucks Workers United. “Our Strike (Red Cup Rebellion).” Starbucks Workers United. https://sbworkersunited.org/our-strike/
https://www.lilly.com/about/history
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