【なぜ?】トランプ氏相互関税のリストとその根拠
トランプ大統領が発表した大規模関税政策により、株式市場が急落。ほぼ全輸入品への10%課税と60カ国以上の国への追加関税、日本に24%が課される理由、世界各国の反応、そして市場への影響をわかりやすく解説します。
先週2日、トランプ大統領が発表した関税政策により、世界の市場は大きく揺れました。全輸入品に10%、特定国にはそれ以上の「相互的関税」が課されると発表されると、S&P500は1日で4.3%、NASDAQは5.1%下落。これはパンデミック初期以来の歴史的急落となりました。
本記事では、米国投資アプリを運営するWoodstock経済部が
トランプ関税の相手国リスト
日本への関税24%の計算方法
株価下落はいつまで続くのか
などについてわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
トランプ関税始動──相手国リストと概要
なぜ日本は24%?──根拠となる計算式
その昔、関税をかけたらどうなったか
“不景気”ではなく“混乱”
先週2日、トランプ大統領が発表した関税政策により、世界の市場は大きく揺れました。全輸入品に10%、特定国にはそれ以上の「相互的関税」が課されると発表されると、S&P500は1日で4.3%、NASDAQは5.1%下落。これはパンデミック初期以来の歴史的急落となりました。
本記事では、
トランプ関税の相手国リスト
日本への関税24%の計算方法
株価下落はいつまで続くのか
ということについてわかりやすく解説します。
1. トランプ関税始動──相手国リストと概要
2025年4月2日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が発表した関税政策は、国際貿易の前提を大きく揺るがすものでした。今回の措置は、全輸入品に対して一律で課される「ベースライン関税」と、アメリカが特に大きな貿易赤字を抱える国々に追加で課す「相互関税」の二段構えになっています。
すべての国からの輸入品には、まず10%の関税が一律で適用され、そのうえで、赤字の大きな相手国にはさらに上乗せされた関税がかかります。
例えば、中国からの輸入品には合計54%(既存20%+追加34%)、EUには20%、ベトナム46%、台湾32%、メキシコ18%、インドネシア32%、そして日本には24%の関税が新たに課されました。
こうした対象国はおよそ60か国に及び、実質的には世界の貿易相手の半数以上が直接的な影響を受けます。
対象となる品目は、自動車、電子機器、農産物など多岐にわたり、これらはアメリカ国内の製造業や小売業にとって欠かせない重要な輸入資源です。
企業にとっては、この関税によって調達コストが大きく上昇することが避けられず、政府の試算では平均で約15%のコスト増になると見込まれています。一方で、関税収入としては年間約3,200億ドルの増収が見込まれており、これは短期的には財政上のプラス材料にもなり得ます。しかしながら、その実質的な負担は企業を通じて最終的に消費者に転嫁されるとされており、生活費や物価への影響も懸念されています。
関税発表の直後、世界中の市場は敏感に反応しました。アジア・欧州の株式市場は軒並み3〜5%の下落を記録し、アメリカのS&P500指数も週を通じて約7%、年初来で15.8%の下落となりました。これは2020年のパンデミック初期以来の大幅な下落規模であり、金融市場が今回の政策をどれほど深刻に受け止めたかが表れています。NASDAQ指数も年初来で約19%下落し、テクノロジー株への打撃も鮮明となっています。
トランプ大統領は今回の発表を「アメリカ経済の解放の日」と位置づけ、国内製造業の再興と雇用創出を掲げましたが、専門家の間では、関税による保護政策が実際にアメリカ経済全体にとってプラスになるかについては疑問視する声が多く上がっています。
また、日本を含めた各国の反応は以下のような感じです。
日本の反応
日本政府は、トランプ政権の決定に強い遺憾の意を示しました。石破茂首相は、「このような措置は日米関係にとって理解しがたい」と述べ、関税の撤回を求めました。また、日本は米国との交渉を通じて、関税問題の解決を図る意向を示しています。
中国の反応
中国政府は、米国の関税措置に対し、即座に報復関税を発表しました。具体的には、米国からの全輸入品に対し34%の追加関税を課すとしています。さらに、中国商務省は、米国の行動を「経済的ないじめ」と非難し、「最後まで戦う」との強い姿勢を示しました。
イギリスの反応
現状アメリカと貿易赤字となっていないはずのイギリスですが、10%の関税が課せられることになりました。これに対しイギリス政府は、冷静かつ慎重な対応を示しています。キア・スターマー首相は、「大統領が自国のために行動したように、私は英国の利益のために行動する」と述べ、対話を通じて解決を図る意向を示しました。
また、ジョナサン・レイノルズ貿易相は、議会で「すべての選択肢をテーブルの上に置いている」と述べ、報復関税の可能性も排除しない姿勢を示しました。
2. なぜ日本は24%?──根拠となる計算式
トランプ政権は、日本に対して24%の関税を課すと発表しました。この措置は「相互関税(Reciprocal Tariff)」という新たな通商政策に基づくもので、各国がアメリカに課しているとみなされる関税や貿易障壁に応じて、アメリカも同等の関税を課すという考え方に立っています。
この関税率の根拠となっているのが、ホワイトハウスが公表したあるシンプルな計算式です。一見すると専門的な数式に見えますが、内容は実に単純で、次のような方法で算出されています。
まず、アメリカがその国とどれだけの貿易赤字を抱えているかを調べます。つまり、その国からアメリカが輸入している額から、アメリカがその国に輸出している額を引いた「差額」です。
そして、その赤字額をその国からの輸入総額で割ります。最後に、その数値を2で割って、関税率として設定するのです。
つまり、こういうことです。
輸出額(アメリカ→その国)よりも輸入額(その国→アメリカ)の方が大きいと貿易赤字。
その差額(=赤字)を、関税で調整して「輸入を減らす」ことでバランスを取ろう、という発想。
弾力性(ε)と価格転嫁率(φ)がわかっていれば、どれくらい関税をかければ輸入が減るかがわかるので、「ちょうど赤字がゼロになるポイントの関税率」をこの数式で出せる。
たとえば、仮にアメリカが日本との間に680億ドルの赤字を抱えており、日本からの輸入が1,480億ドルであれば、680 ÷ 1,480 = 約0.459、つまり約46%の赤字率ということになります。それを2で割ると23%。この数字に小数点の切り上げなどが加えられ、日本には24%の関税が課されることになったと考えられます。
つまり、日本は「実質的にアメリカに46%の関税を課しているのと同じくらい不公平だ」という理屈らしいです。
ただし、このロジックには経済学者たちからも批判が上がっています。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのトーマス・サンプソン教授は、「この計算式は、アメリカが赤字を抱えているという事実に数字的な正当性を与えるために“逆算”されたものにすぎず、経済的な根拠はない」と指摘しています。
また、この方式では、その国がアメリカに課している実際の関税や非関税障壁(規制や通貨政策など)は考慮されていません。つまり「相互関税」と言いつつも、実際には相手国のルールや条件に応じて鏡のように設定されたものではないという点で、「本当の意味での相互性はない」と批判する声もあります。
日本への24%の関税も、実際に日本が同じ水準の関税をアメリカに課しているというわけではなく、アメリカ側の赤字の大きさを基準に「アメリカがどれだけ損をしているか」を示す数字として導かれたもののようです。
計算ミスも指摘されている…
また、最新の報道によれば、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の研究員が、トランプ政権が発表した「相互関税」の計算方法に誤りがある可能性を指摘しています。彼らの再計算によれば、実際の関税率は発表された数値の約4分の1に過ぎず、日本に対する関税率は24%ではなく、一律の10%のみが適用されるべきだとしています。
参考 : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07CSJ0X00C25A4000000/
今回の措置はロジックが曖昧であり、トランプ大統領流の交渉材料としての機能と見るのが妥当でしょう。
3. その昔、関税をかけたらどうなったか
2025年4月、トランプ大統領が打ち出した大規模な関税政策は、世界中に衝撃を与えました。政策の主な目的は「アメリカの製造業をよみがえらせること」。
たしかに、安価な海外製品に押されてきた国内産業にとっては、関税によって競争相手が減ることで一定の保護が生まれるのは事実です。
しかし、「関税=経済を守る手段」という理解は、短期的な視点にとどまるものです。歴史を振り返れば、関税が長期的に経済に悪影響を及ぼした例は決して少なくありません。その象徴としてよく語られるのが、1930年代の「ブロック経済」です。
当時、世界恐慌に見舞われたアメリカは、「スムート・ホーリー関税法」によって輸入品に大幅な関税を課しました。それに対し、他国も次々に報復関税を導入し、国際貿易は崩壊寸前に追い込まれました。
こうして世界は、国ごとに貿易を囲い込む「ブロック経済」へと突き進みました。貿易量の急減は経済を冷え込ませ、失業と不況が世界的に広がり、やがて第二次世界大戦という大きな悲劇を招く背景にもなったとされています。
この教訓から、戦後にはGATT(関税及び貿易に関する一般協定)が設立されました。GATTは、「差別しない」「自由に貿易する」「多国間で合意する」という原則のもと、国際社会全体で貿易の自由化と安定を目指す制度です。現在のWTO(世界貿易機関)もこの流れを受け継ぎ、国際的な経済秩序を支える柱となっています。
ところが今回のように、アメリカが一方的に他国の高関税を課すというのは、GATTやWTOが培ってきた「国際協調」のルールから大きく逸脱しています。そしてもうひとつ見落としてはならないのが、国内における競争の低下という問題です。
関税によって海外製品が高くなると、確かにアメリカ国内の企業は一時的に守られます。しかし裏を返せば、競争が減ることで企業が「努力しなくても売れる」状態に陥りやすくなります。新技術の導入やコスト削減への努力が鈍り、産業の革新や生産性の向上が遅れるリスクが高まっていくのです。
外からの刺激がなければ、産業の健全な成長は難しくなる――これは世界中の経済史に共通する傾向です。
さらに、消費者の立場から見ても、関税によって製品価格が上がれば選択肢が減り、生活コストも上昇します。アメリカファーストを掲げるトランプ政権ですが、アメリカ国民の利益となっていくのでしょうか。
4.“不景気”ではなく“混乱”
トランプ大統領による新たな関税政策の発表直後、アジアやヨーロッパの株式市場は一斉に下落し、S&P500も週次で9%を超える大幅な下げを記録しました。歴史的な急落です。日本でも日経平均の先物が急落し、為替は一時1ドル=139円台まで円高が進みました。こうした動きを受けて、「世界は不景気に突入したのではないか」という声も一部で広がっています。
しかし、この局面で重要なのは、いま私たちが直面しているのは“景気後退”そのものではなく、市場の混乱であるという点を見失わないことです。
実際、4月1日に発表されたアメリカの2025年第一四半期GDP速報値(年率換算)は+1.8%の成長を維持しており、景気後退の定義とされる2四半期連続のマイナス成長には当てはまりません。失業率も3.9%と依然として低水準で、雇用環境はおおむね安定しています。
こうした基本的な経済指標から見れば、現時点で「不況入りした」と断定するには根拠が弱いと言わざるを得ません。実際、大手投資銀行のJPモルガンも「足元の成長鈍化は関税による一時的な不確実性に市場が過敏に反応しているためであり、実体経済のファンダメンタルズは今のところ堅調」と分析しています。
言い換えれば、今回の市場の動揺は実態というよりも不安心理で荒れている状態が見えているだけということです。
一方で、混乱によって生まれた誤った認識や過度な悲観が、実際の経済活動を委縮させてしまうことです。企業が投資を先送りしたり、消費者が財布のひもを締めたりすれば、それ自体が経済を減速させる要因となります。つまり、「混乱」が本当に「不況」を呼び込んでしまうリスクもあります。
現在の状況は2008年のリーマンショックのような金融危機とは明確に異なります。当時は金融システムそのものが崩壊の危機にありましたが、今回は関税始動による混乱が原因であり、経済の基盤そのものが破綻しているわけではありません。
だからこそ、短期的な市場の動きだけで判断するのではなく、冷静に状況を見極める視点が求められています。
参考文献
NHK. (2025年4月3日). トランプ大統領 相互関税日本に24% 一律10%関税【一覧表も】. NHKニュース. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250403/k10014768241000.html
日本経済新聞. (2025年4月7日). トランプ関税、G7にも波紋 世界経済の転機に. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07CSJ0X00C25A4000000/
Chu, B., & Edgington, T. (2025, April 3). How were Donald Trump's tariffs calculated? BBC News. https://www.bbc.com/news/articles/c93gq72n7y1o
Office of the United States Trade Representative (USTR). (2025). Reciprocal Tariff Calculations. https://ustr.gov/issue-areas/reciprocal-tariff-calculations
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