米AI関連株が急落 AIブームの行く末
8月の最終週、米国株市場でAI関連銘柄の株価が大きく下落しました。NVIDIA、ブロードコム、パランティアといった代表的なAI関連企業が軒並み売られました。本記事では、売りが続いた背景と今後の見通しについて解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
なぜAI関連株は一斉に売られた?
①「期待のハードルが高すぎた」問題
② バリュエーション(株価評価)の異常な高さ
③利益確定とポジション調整のタイミングが重なった個別株 決算は好調も売り 一部暴落も
NVIDIA(エヌビディア):好決算でも期待に届かず株価は下落
Dell(デル):AI特需は好材料でも、コストと競争が重荷に
Marvell(マーベル):期待外れの決算で急落、半導体セクター全体にも波及
Palantir(パランティア):空売りと利確売りが直撃し、株価急落今後の見通し:専門家たちはどう見ている?
短期的な調整は「むしろ健全」との声
長期的には「AIはまだまだこれから」
企業の「選別」が始まっている
本当にAIバブルなのか?まとめ
8月の最終週、米株式市場は週末にかけて下落しました。特に8月29日(金)にはハイテク・AI関連株に売りが広がり、ナスダック100指数は週間で0.35%の下落となりました[1]。これはNVIDIAなどAI銘柄や半導体株の売りが指数を押し下げたためです[1]。同週前半にはS&P500指数が過去最高値を更新する場面もありましたが、週末の急落で結局主要指数は週ベースで小幅安となっています
なぜAI関連株は一斉に売られた?
①「期待のハードルが高すぎた」問題
NVIDIAの決算が象徴的です。同社は2025年第2四半期に売上高が前年比+56%という驚異的な成長を記録しました。しかもアナリスト予想も上回っていたのです。にもかかわらず、株価は決算直後から反落。週末までに3.4%下落しました。
原因は、期待が異常に高すぎたためです。「驚異的だが想定内」と投資家に判断され、ポジティブサプライズがないというだけで売りに傾きました。
これは他のAI関連企業にも当てはまります。デルは好調なAIサーバー需要を報告しましたが、利益率の低下を警告したことで9%下落。パランティアも過去最高値更新後に17%の調整。市場は「好業績でも油断はできない」と再認識したのです。
このように、期待が先行しすぎた市場では「完璧を超える結果」以外はネガティブに受け取られやすく、結果的に売りが集中する要因になります。
② バリュエーション(株価評価)の異常な高さ
AI関連株は2023年以降、まさに急騰を続けてきました。この急騰によって株価収益率(PER)がドットコムバブル期並みとの指摘が出るほど割高水準に達していました。
たとえばパランティアの先行き12ヶ月の予想PER(株価収益率)は200倍超で、S&P500内でもトップの割高水準です。通常、安定企業のPERは15〜25倍程度。200倍という数値がどれほど突出しているかがわかります。
NVIDIAでさえ、当時のPERは30〜35倍程度。まさにAIバブルと言える状況でした。このように株価が企業の実力以上に膨らんだ状態では、少しのネガティブ要素でも大きな下落を招くことになります。
MITの調査によれば「企業が進める生成AIプロジェクトの95%は直ちには収益に貢献していない」というデータもあり、AIブームと実ビジネスの間に現状乖離があることが示されました。投資家の間でも「AIで盛り上がりすぎていないか?」との冷静な見方が増え、適正価格への調整が起きたと言えます。
③利益確定とポジション調整のタイミングが重なった
また、8月末という時期的な要素も今回の下落に大きく影響を与えました。
米国市場では、8月末から9月にかけては「ポートフォリオ調整」が起きやすい時期です。特に8月は夏季休暇明けで機関投資家がポートフォリオをリバランスする時期にあたり、上昇幅の大きかった銘柄ほど(今回で言えばAI関連株)売りの対象となりました。
また9月は米国市場で統計的に最もパフォーマンスが悪い月として知られ、長期休暇(レイバー・デー)前に一旦リスク回避をする動きも見られたようです。
専門家によれば、近年は個人投資家の取引シェアが全体の3割にも達しており、彼らの動向が市場に与える影響も無視できません。今回のように8月末の局面では「熱狂した個人投資家が一服し利益を取りに動いた」ことが影響を与えたと考えられます。
以上のように、年始からのAI急騰と投資家のリバランス時期が重なり、売りが集中しやすい場面だったのです。
個別株 決算は好調も売り 一部暴落も
NVIDIA(エヌビディア):好決算でも期待に届かず株価は下落
AI向け半導体のトップ企業として知られるNVIDIA(エヌビディア)は、2025年第2四半期の決算を8月末に発表しました。売上高は前年比で56%増の467億ドルと、非常に力強い成長を見せ、市場予想を上回る好内容でした。
ところが、株価は発表直後から下落に転じてしまいます。理由は、投資家の期待があまりにも高すぎたためです。「すごい成績だけど、想定の範囲内だった」という印象を持たれてしまい、サプライズ感に欠けたことが失望を招いたようです。
さらに、主力のデータセンター事業の売上が一部の予測に届かなかったことや、中国向けの事業に対する不透明感もマイナス材料となりました。米中の対立が続く中で、NVIDIAは今後の業績予想から中国売上を完全に除外するという、異例の対応をとっています。これも投資家心理には重く響きました。
同社のジェンスン・フアンCEOは、「AIによる新たな産業革命が始まった」と語り、今後5年で市場規模が3〜4兆ドルに達するとの強気な見通しを示しています。それでも「期待のハードルが高すぎた」との見方が強く、株価は28〜29日の2日間で約4%、週末までに合計3.4%下落しました。
Dell(デル):AI特需は好材料でも、コストと競争が重荷に
PCメーカーとして知られるデル・テクノロジーズも、AIの追い風を受けている企業のひとつです。8月末に発表された最新の決算では、AIサーバーの受注が大幅に増えたことが明らかになりました。たとえばイーロン・マスク氏が立ち上げたxAIなどから、合計で200億ドルを超える注文を受けているとのことです。
一見すると非常に好調な内容ですが、株価は29日に約9%も急落しました。これは、AIサーバーの需要が伸びていても、その製造コストの上昇や競争の激化により、利益率が圧迫されているという点が嫌気されたためです。
市場は「たとえ注文がたくさんあっても、儲からないのでは意味がない」と判断し、売りが優勢になりました。強気の需要予測が出たにもかかわらず、利益面への懸念がそれを上回ったかたちです。
Marvell(マーベル):期待外れの決算で急落、半導体セクター全体にも波及
半導体メーカーのマーベル・テクノロジーは、NVIDIAやBroadcomと並んで「AI時代のピック&ショベル銘柄(=インフラを支える重要企業)」とされる存在です。
しかし、8月末に発表された最新の決算では、データセンター向けの売上が市場の予想を下回り、さらに次の四半期の業績見通し(ガイダンス)も期待に届かない内容でした。
この発表を受け、株価はたった1日で18〜19%も急落。AI関連セクター全体の株価下落を引き起こすほどの影響力を持ちました。
「AIブームの恩恵が、すべての企業に行き渡っているわけではない」という現実が突きつけられ、市場にショックが広がりました。アナリストたちも相次いでマーベル株の投資判断を引き下げ、今後に対して慎重な見方が強まりました。
Palantir(パランティア):空売りと利確売りが直撃し、株価急落
AIデータ解析を手がけるパランティアは、2023年以降「AI企業」としてのポジションを強く打ち出し、株価を大きく伸ばしてきました。2025年には年初から8月中旬までに株価が約2.5倍に上昇し、S&P500の中でもトップパフォーマンスを誇る銘柄となっていました。
しかし、8月12日に過去最高値をつけたのをピークに、そこから株価は反転。月末時点では高値から17%も下落しており、5日連続で値を下げる日もあるなど、調整が一気に進みました。
8月中旬、空売りで有名な投資家アンドリュー・レフト氏が、パランティア株を「実体以上に過大評価されている」と名指しで批判。自ら空売りポジションを取っていることを公表しました。
この発言が個人投資家の不安を煽り、「これはバブルではないか?」という心理を引き起こしました。その直後から株価は下落を始め、他の空売り筋も続々とポジションを構築。売り圧力が一気に高まることとなりました。
今後の見通し:専門家たちはどう見ている?
8月末に起きたAI関連株の急落に驚いた方もいるかもしれません。ただ、専門家たちの見方は一様に「AI市場の終わりではない」というもので、むしろ前向きな意見も多く出ています。ここでは、短期・中期・長期の視点から今後の見通しをわかりやすく整理してご紹介します。
短期的な調整は「むしろ健全」との声
まず多くの市場アナリストが共通しているのは、「今回の下落は、AI株が上がりすぎたことによる自然なガス抜きだった」という点です。
Baird社のロス・メイフィールド氏は、「AIはこれからも市場を動かし続ける基盤的な力です」と語っており、需要自体は引き続き強いと強調しています。実際、NVIDIAの最新決算を見ても、AIインフラへの投資は依然として活発であることが数字にも表れています。
パランティアのように大きく下げた銘柄も、「年初来の上昇率を考えれば一時的な調整は当然」とする見方が主流です。実際、パランティアは直近の決算で初めて四半期売上が10億ドルを超え、前年比+48%という成長を見せました。また、米政府との大型契約も進んでおり、企業としての実態はむしろ堅調です。
著名投資家のルイ・ナヴェリエ氏も「次の決算では再び予想を上回るだろう。今の調整はむしろ健全だ」とコメントしており、短期的な株価の上下よりも、企業の成長ストーリーに注目すべきだという考えが多く見られます。
長期的には「AIはまだまだこれから」
AI関連株に強気な見方をする専門家たちは、「AIは単なるブームではなく、社会構造そのものを変える力がある」と見ています。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、「AIは新しい産業革命の幕開けであり、2030年までにAIインフラへの投資が累計で3〜4兆ドル規模になる」と予測しています。
この見方を裏付けるように、MicrosoftやGoogle(親会社はAlphabet)などの大手IT企業は、AIクラウドや生成AIに巨額の投資を継続しています。実際、2025年の時点で米国のテック企業がAI関連設備に投じる金額は年間3500億ドル(約52兆円)とも報じられており、AIへの本格的な投資はすでに始まっています。
また、ChatGPTのような生成AIは月間で50億回以上利用されるなど、「実際に使われている技術」であることも重要なポイントです。かつてのドットコムバブルと異なり、「中身のあるブーム」であることを示しています。
ちなみに、株価が大きく下がった週にも関わらず、Googleの親会社であるAlphabetは週単位で6%以上も上昇しました。これは、独自の生成AI「Gemini」や新しいAI製品への期待が高まっているためです。このように、確かな技術や実績を持つ企業には、むしろ資金が集まっている状況です。
企業の「選別」が始まっている
AI関連株と一口に言っても、すべての企業が今後も生き残るとは限りません。今の市場では、「本当に稼げる企業」と「まだ収益化できていない企業」が明確に分かれ始めています。
たとえば、パランティアや小型株のC3.aiなどは、非常に高いPER(株価収益率)を持ちながらも利益が伴っておらず、株価が伸び悩んでいます。一方で、Microsoftや台湾TSMCのように実際の利益やスケールメリットがある企業は、安定して評価されています。
UBSなどの専門機関も、「将来性よりも、実績を持つ企業に注目すべきだ」と投資家に呼びかけています。
今後は、「AI技術をどう活用して実際の収益につなげるか」「それを持続できるか」が重要な評価ポイントになります。つまり、“技術がある”ではなく、“技術をビジネスにできるかどうか”が重要な焦点となりそうです。
本当にAIバブルなのか?
今回のAI株の急落を受けて、「もしかしてバブル崩壊?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。確かに、株価の急騰・急落、個人投資家の熱狂ぶりなど、一部では2000年頃のITバブルと似たような現象も見られます。
ですが、専門家の多くは「今回は中身が違う」と強調しています。
ドットコムバブル当時では、利益どころか売上すらない企業に資金が流れ込んでいました。しかし、現在のAIブームではNVIDIAやGoogleのように、すでに売上・利益がしっかり出ている企業が主役です。
加えて、政府や企業もAIの導入を急速に進めており、データセンターなどインフラ面での整備も着実に進行しています。つまり、「期待先行」ではあるものの、「実需が伴っている」ことが今のAIブームの特徴です。
ただし、短期的な株価の変動(ボラティリティ)はしばらく続く可能性があります。たとえば、金利や中国情勢、規制強化などによっては、再び売りが強まる場面も考えられます。
まとめ
今回のAI関連株の下落は、過剰な期待が冷やされた「健全な調整局面」と捉えることができます。相場ではよく「良い決算でも下がる」という現象が起きますが、それはすでにその好材料が織り込まれていたからです。
しかし、AIそのものの成長ストーリーは何ら終わっていません。むしろこれから数年、あるいは10年単位で、さまざまな産業や社会構造を変えていくと予測されています。
だからこそ、今後は「どの企業がその流れの中で確実に利益を出し続けられるのか?」を見極めることがとても重要です。
短期の株価に一喜一憂するのではなく、企業の実力(ファンダメンタルズ)に注目しながら、中長期的な目線で投資を考えていくことが重要になっていきます。引き続きAI関連企業の業績や戦略を注視していくことが大切でしょう(※投資判断は各自の責任で行ってください)。
参考文献
Randewich, N. (2025年8月29日). S&P 500 ends lower as Dell and Nvidia drop. Reuters.
https://www.reuters.com/world/us/sp-500-ends-lower-dell-nvidia-drop-2025-08-29/Randewich, N. (2025年8月28日). S&P 500, Dow score record high closes as Nvidia results buttress AI rally. Reuters.
https://www.reuters.com/world/china/sp-500-dow-score-record-high-closes-nvidia-results-buttress-ai-rally-2025-08-28/Cherney, M. A. (2025年8月28日). Nvidia CEO says AI boom far from over after tepid sales forecast. Reuters.
https://www.reuters.com/business/nvidia-ceo-says-ai-boom-far-over-after-tepid-sales-forecast-2025-08-28/Sor, J. (2025年8月25日). 「パランティア株が過去最高から2週間で17%急落した3つの理由」. Business Insider Japan.
https://www.businessinsider.com/palantir-stock-price-pltr-outlook-record-high-selloff-andrew-left-2025-8Vaiman, Y. (2025年8月31日). The Week That Was, The Week Ahead: Macro & Markets, August 31, 2025. TipRanks.
https://www.tipranks.com/news/the-week-that-was-the-week-ahead-macro-markets-august-31-2025Frąckiewicz, M. (2025年8月31日). AI Stocks Whipsaw as Nvidia Stumbles, Alibaba Soars – Key News Aug 30–31, 2025. TS2 Space.
https://ts2.tech/en/ai-stocks-whipsaw-as-nvidia-stumbles-alibaba-soars-key-news-aug-30-31-20
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