AWSの大規模障害 株価への影響は?
今週21日、Amazon ($AMZN)が展開するクラウド事業「AWS」で大規模な障害が発生しました。SNSや金融アプリ、公共サービスまで幅広い分野に影響が及びました。本記事ではAWSとは何か、障害による株価への影響について解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
そもそもAWSとは?
AWSに障害発生
世界中のアプリやサービスに影響
「クラウド一強」の脆弱性
そもそもAWSとは?
Amazon Web Services(AWS)は、Amazonが運営するクラウドコンピューティングサービスで、いまや世界中の企業やサービスの“裏側”を支えるインフラとして欠かせない存在です。
ウェブサイトやアプリ、オンライン決済、動画配信やスマホゲームまで、私たちが日々利用する多くのサービスはAWSの上で動いています。
企業は自前でサーバーやネットワーク機器を保有せずとも、AWSを利用することで、大量のデータ処理やシステム運用をクラウド上で実現できます。
AWSはその利便性とスケーラビリティ(拡張性)から、政府機関や金融機関、報道機関に至るまで幅広く導入されており、現在ではインターネット全体の約3分の1がこの仕組みに依存しているとも言われています。Amazonにとっても、2024年度に1,070億ドルを売り上げたAWSは、全体の利益を支える中核部門です。
AWSに障害発生
そのAWSが、昨日10月20日に大規模な障害を起こしました。
最初に障害を報告したのは、米東部時間10月20日午前3時11分(日本時間では同日午後)。対象は、AWSの主要な地域である「US-East-1」、すなわちバージニア州北部にある巨大なデータセンター群でした。ここはAWS全体でも最大規模の拠点で、多くのサービスが依存しています。
原因としてAWSが明かしたのは、DynamoDBというデータベースサービスに関連したDNS(ドメインネームシステム)エラー。DNSは、アプリやサービスの名前(例:snapchat.com)を、実際に接続するためのIPアドレスに変換する役割を持ちます。この機能が正常に動作しなかったため、「行き先がわからない」状態に陥った通信が大量発生しました。
これに加え、内部ネットワークのトラフィックを分散・監視する「ネットワークロードバランサー」のヘルスチェック機構に不具合が発生。複数のAWSサービスで、APIエラーや接続障害が続出しました。
AWSは復旧の過程で新規リクエストの制限や、サービスレベルの調整を余儀なくされ、問題が完全に収束したのは米時間で10月20日午後4時過ぎ(日本時間では21日未明)でした。
世界中のアプリやサービスに影響
このAWSの障害により、世界中に影響がでました。
Downdetector(ダウンディテクター)には、世界中から6.5万件を超える障害報告が寄せられ、影響は1,000以上のサービスに及んだとされます。
この障害は単なるITインフラの問題にとどまらず、私たちの暮らしのあらゆる場面に影響を与えました。
Snapchatでは、ログイン不能やフレンドリストの消失、ストリークが途切れるといったユーザーからの報告がSNSに溢れました。RobinhoodやCoinbaseなどの金融系アプリも一時的に停止し、特に仮想通貨や米国株の取引を行っていたユーザーの間では大きな混乱が生じました。
マクドナルドやスターバックスの公式アプリも影響を受け、注文や決済が滞る場面も。
さらに、航空会社のUnited Airlinesや通信キャリアのT-Mobile、さらには米国の公的医療制度Medicareのサイトにも不具合が発生。Medicareのオープン登録期間に重なったことで、一部のユーザーは大事な登録手続きができなくなるという深刻な事態に直面しました。
報道機関にも障害は波及し、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、AP通信といった著名なメディアが速報配信機能を一時的にバックアップ体制に切り替えるなど、対応に追われました。
こうした事例を見ても、AWSが私たちの生活のインフラとなっていることがよくわかります。
株価に影響は?
技術的には深刻な障害、しかもAmazonの収益の柱であるAWS部門に直撃——にもかかわらず、Amazonの株価(AMZN)は大きく下落しませんでした。
45人によるアナリスト評価は「強い買い」になっています。(アナリスト評価は、特定の株式の取引を推奨するものではありません。)
2025年10月21日の市場では、Amazon株は前日比ほぼ変動なし(±0%)で推移し、その後はむしろ小幅に上昇。これは「金曜日のセッションと同じパターン」であり、投資家が特に大きな懸念を持たなかったことが伺えます。
市場が注目していたのは「一時的な障害」ではなく、次回の四半期決算と、AWSの成長見通しでした。言い換えれば、投資家はこの障害を一時的な技術不具合として受け止め、Amazon全体への信頼を崩すほどの材料とは見なさなかったのです。
一方で、AWSが今後AI領域にどれだけ投資し、競争力を保つかについては高い関心が集まっており、今回の障害が長期的にAWSの評価を左右するとは断定できません。
「クラウド一強」の脆弱性
今回のAWS障害は、単にアプリが使えなくなったという「不便」以上に、現代社会が抱える根本的な脆弱性を浮き彫りにしました。それは、私たちの生活や仕事の多くが、たった数社のクラウドサービスに過剰に依存しているという構造的な問題です。
たとえば、今回の障害では「Signal(シグナル)」というメッセージングアプリも影響を受けました。Signalは、メッセージ内容が暗号化されることから、世界中のジャーナリストや人権活動家、政府関係者などが愛用している、いわば「最も安全な通信手段のひとつ」とされているアプリです。そんなSignalでさえ、裏側ではAWSを基盤としており、障害の影響を完全には免れなかったのです。
この事実に対して、国際NGO「Article 19」が強く警鐘を鳴らしました。この団体は、表現の自由や通信のプライバシー保護などをテーマに活動している非営利組織で、世界中のデジタル権利を支援しています。同団体のデジタル部門代表であるコリーヌ・キャス=スペス氏は、今回の障害について「単なる技術的な不具合ではなく、民主的な失敗である」と厳しく指摘しました。
彼女が言う「民主的な失敗」とは、AWSのような単一の巨大クラウド基盤が停止することで、報道機関や暗号化通信、公共サービスなどが一斉に機能不全に陥り、情報へのアクセスや言論の自由そのものが制限されてしまう危険性を意味しています。
たとえば、今回の障害では、AP通信(Associated Press)が通常の速報配信に支障を来たし、緊急対応として「AP Backup」という別の通信網に切り替えて情報発信を続ける必要がありました。
Amazon自身、過去にも2021年と2023年に同様の大規模障害を経験しています。今回が3度目であるにもかかわらず、それでもなお多くの企業がAWSから離れられないという現実もまた、問題の根深さを示しています。
それは、現状のクラウド市場において、AWSに匹敵する規模と性能を持つサービスが非常に限られているためです。事実上、Googleの「Google Cloud Platform」やMicrosoftの「Azure」など、いずれもアメリカの巨大IT企業によるものに集中しており、他に選択肢が乏しいという状況です。
ヨーロッパなどでは「技術的主権(デジタル・ソブリンティ)」を確保するため、自国や地域内でのクラウド基盤構築を模索する動きもあります。たとえば、スーパーマーケット大手のリドル(Lidl)を傘下に持つシュワルツ・グループは、AWSに対抗すべく「Stackit(スタックイット)」という独自のヨーロッパ産クラウドサービスを立ち上げました。
しかし、現時点ではその性能や規模はAWSには遠く及ばず、企業が本格的に移行するにはまだハードルが高いのが実情です。
こうした背景から、多くの企業は“リスクを認識しながらも離れられない”というジレンマに陥っています。AWSがもたらす利便性と経済性は圧倒的である一方で、同時に一極集中によるシステム的・政治的リスクも抱えているという、極めて複雑な立場にあります。
今月10月30日には、Amazonの決算発表があります。Amazonの収益を左右する大きな柱の一つがAWS。直近では成長率17%台などが報じられています。
今月はAmazonを含め大手企業の決算発表が続き、注目が集まります。
参考文献
Bensinger, Greg. (2025, October 21). アマゾンAWSの大規模障害復旧、一時は世界で影響広がる. Reuters. https://jp.reuters.com/markets/commodities/CRWAJHWOLVKF5OHJV62URGKKEY-2025-10-20/
Smith, Patrick; Goggin, Ben; Kopack, Steve. (2025, October 20). Amazon says it has resolved internet services outage that left websites and apps lagging around the world. NBC News. https://www.nbcnews.com/news/us-news/amazon-web-services-outage-websites-offline-rcna238594
Kleinman, Zoe. (2025, October —). What caused the AWS outage — and why has it made the internet fall apart?. BBC News. https://www.bbc.com/news/articles/cev1en9077ro
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