トランプ関税発動 日本への影響は?
トランプ大統領が打ち出した輸入車への関税政策が、4月3日から発動します。国内産業の保護を掲げるこの動きは、アジアの同盟国を直撃し、アメリカ経済や株式市場にも波紋を広げています。本記事では、その背景と影響をわかりやすく解説していきます。
先週、米トランプ大統領が4月3日から発動する自動車関税を正式に発表し、米国内外の自動車業界や金融市場に衝撃が広がっています。関税率は最大25%に達し、日本や韓国をはじめとする同盟国企業にも大きな影響が及ぶ見通しです。
本記事では、米国投資アプリを運営するWoodstock経済部が
トランプ関税とは
日本への影響は?
関税は米国にとっていいことなのか
などについてわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
トランプ氏、自動車関税を発動へ
自動車関税で最も打撃を受ける国は?
EVバッテリー業界に広がる波紋
日本・韓国の自動車メーカーに直撃
日本への影響は?
自動車関税がアメリカ経済に与える影響
関税は米国にとっていいことなのか関税はテスラに有利、GMとフォードには痛手
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トランプ氏、自動車関税を発動へ
トランプ大統領は4月3日から、米国に輸入される乗用車やSUVなどに対して最大25%の関税を課す方針を打ち出しました。もともと2019年に「国家安全保障上の脅威」と判断された調査(通商拡大法232条)を根拠にしており、今回の布告はその調査結果を再び踏襲する形だとみられます。
日本や韓国、メキシコ、カナダ、そしてドイツなど、米国に大量の自動車を輸出している国々が直接のターゲットとなります。
トランプ氏は「米国内で作れば関税はかからない」と強調しており、製造業の拠点を米国に戻して雇用を増やそうとする狙いがあるようです。
一方で、このような保護主義的な姿勢は世界的なサプライチェーンを混乱させ、米国自身にもインフレ圧力や成長鈍化といった副作用をもたらすリスクが高まると、多くの経済専門家や業界団体が警鐘を鳴らしています。
自動車関税で最も打撃を受ける国は?
まず、そもそも米国はどの国から自動車を多く輸入しているのでしょうか。下記の円グラフは、米国への乗用車輸出台数の主要な国・地域を表したものです。
図のメキシコと韓国からの輸入がいずれも約200万台と非常に大きな割合を占めます。
日本も100万台ほどを輸出しており、カナダも含めれば北米地域以外からの輸入の大部分をアジア勢が担っていることが分かります。
EVバッテリー業界に広がる波紋
今回の関税がとりわけ深刻なのは、EV(電気自動車)市場への影響です。
電気自動車ではバッテリーの供給体制が極めて重要であり、日本や韓国企業が中国メーカーに続く生産シェアを獲得しています。
こうした企業は、自動車メーカーのEV戦略を支える重要な存在でありながら、原材料高騰や大規模投資の負担などで利益率が低いのが実情です。さらに、韓国・日本の自動車メーカーが関税で利益を削られると、その影響はバッテリーメーカーにも波及します。
投資や研究開発に充てる資金が不足し、結果的にEVサプライチェーン全体が停滞してしまう恐れもあるのです。
バイデン前政権下で進められた「中国に依存しないクリーンエネルギーサプライチェーンづくり」は、韓国や日本の電池メーカーの米国内投資を後押ししてきました。ところが今回の関税措置は、そうした動きに逆行する形となり、中国企業のさらなる台頭に繋がる可能性が指摘されています。日本や韓国へのネガティブなインパクトが大きく、中国が相対的に伸びてくる、という構図です。
日本・韓国の自動車メーカーに直撃
韓国の現代自動車(ヒュンダイ)と起亜自動車(キア)は、北米市場での販売台数が好調で、グローバル全体の利益の多くを米国で稼ぎ出しています。下記のグラフからも分かるように、両社とも北米事業が収益の大半を占めるほど大きく成長しています。
しかし、ヒュンダイやキアが北米向けに投入している車両すべてを米国内生産でまかなっているわけではありません。
約3分の2が韓国国内や他地域で生産されているため、25%という高率の関税がかかれば、企業収益は大きく棄損されるでしょう。
日本のトヨタやホンダ、日産なども同様に米国市場への依存度が高く、これまで巨額の投資や工場拡張を進めてきましたが、それが一気に不利な条件下に置かれる形となります。
日本への影響は?
昨年の日本からアメリカに輸出された乗用車は133万台以上で、これは日本の輸出台数全体の約3分の1にあたります。トヨタは53万台以上、マツダは23万台以上を輸出しており、特に日本からの輸出比率が高いメーカーほど打撃を受けやすい状況です。また、日本からアメリカへの自動車輸出額は約6兆円と、日本の対米輸出全体の28%を占めています。
関税が上がれば販売価格が上昇し、消費者離れや販売台数の減少につながる恐れがあります。さらに、自動車1台には約3万点もの部品が使われており、鉄鋼や電子部品などの関連産業にも波及する可能性があります。日本国内では、自動車関連の製造部門に88万人以上、資材部門にも53万人以上が働いており、影響は非常に広範です。
SMBC日興証券は、関税によって日本企業全体の利益が最大1兆7500億円減少する可能性があると試算しており、野村総合研究所も日本のGDPが0.2%程度下がると予測しています。
日本政府は、自動車産業を「経済の屋台骨」と位置づけ、関税対象から日本を除外するようアメリカに強く求めていますが、今のところ除外は認められていません。メーカー各社も、急な現地増産は難しい中で、価格設定やコスト削減などに頭を悩ませているのが現状です。
このように、今回の関税措置は、日本経済にとって無視できない大きな影響をもたらす可能性があり、今後の政府の交渉や企業の対応が注目されています。
自動車関税がアメリカ経済に与える影響
トランプ大統領が打ち出した自動車関税は、アメリカ国内の景気や物価、家計にどんな影響を与えるのでしょうか。実際のデータをもとに、影響の大きさを見てみましょう。
まず心配されているのが経済の成長の鈍化です。ゴールドマン・サックスは、「関税が広がれば、アメリカの経済成長が年で最大1.3ポイントも落ち込むかもしれない」と予測しています。もともとは0.3ポイント程度の影響と見られていましたが、関税が次々と強化されているため、影響も大きくなってきているのです。
次に、物価の上昇(インフレ)も深刻な問題です。ドイツ銀行の調査では、「関税が最大限かけられた場合、インフレ率は今より1.2ポイント上がり、年3%を超えるかもしれない」としています。
さらに、消費者の中には「今後、物価が5%くらいまで上がるのでは」と心配している人も多いようです。もちろん、これは人々の不安も含まれた数字ですが、輸入品に頼っている生活用品の価格が上がるのは避けられないでしょう。
そして忘れてはならないのが、所得格差への影響です。イェール大学の研究によると、すでに導入された中国・カナダ・メキシコへの関税だけでも、低所得の家庭では使えるお金が約2.5%減ると見込まれています。
一方で、裕福な家庭の減少幅は0.9%ほどにとどまるため、今回の政策は貧しい人ほど生活が苦しくなる仕組みになってしまっています。
関税は米国にとっていいことなのか
関税は「政府の収入になるから良い」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。たとえば「関税で儲けた分を減税に使う」という考えは、短期的には魅力的かもしれません。しかし、経済全体の成長をそぐことになり、長い目で見ると財政にとってもマイナスになる可能性があります。
アメリカは昨年だけで約4740億ドル分の自動車製品を輸入しており、そのうち2200億ドルは乗用車です。このうち、メキシコやカナダからは約400万台もの自動車が輸入されており、これらが一気に25%の関税対象となれば、車の値段が上がって売れなくなるのは目に見えています。そうなると、車を買う人が減り、販売業者や整備工場、関連産業にも広く影響が及ぶでしょう。
さらに過去の例を見ても、関税がアメリカに跳ね返ってくることは明らかです。2018年に導入された鉄鋼やアルミへの関税では、1年足らずで毎月46億ドルもの追加コストと税収の損失が発生したとされています。つまり、関税をかけた側であるアメリカ自身が高い代償を払うことになったのです。
特に自動車のように、多くの部品を海外から調達している産業では、関税によってコストが急激に上がることになります。その結果、アメリカ企業の利益も圧迫され、最終的には消費者がそのコストを払わなければならないことになります。
関税はテスラに有利、GMとフォードには痛手
今回の関税政策発表において、テスラは唯一他社に比べて「有利な立場」にあると見られています。
ドイツ銀行のアナリスト、エジソン・ユー氏は、テスラは米国内で販売するすべての電気自動車(EV)をアメリカ国内で組み立てており、関税の影響を最小限にとどめられると述べています。一方、ゼネラルモーターズ(GM)やフォード、ステランティスなどの老舗メーカーは、海外から多くの車両や部品を調達しているため、大きなコスト増に直面することになります。
GMは約40%の車両をカナダとメキシコから調達しており、JPモルガンの試算では、関税によって最大で140億ドル(約2兆1000億円)の収益を失う可能性があるとされています。
テスラのCEOであるイーロン・マスク氏も、自社が完全に影響を受けないわけではないと認めており、26日のX(旧Twitter)で「テスラにとっても関税の影響は大きい」と投稿しています。
ただし、ドイツ銀行の見立てでは、テスラが輸入に頼っているのはメキシコからのワイヤーハーネス程度で、価格への影響は1.8%の上昇にとどまるとのことです。これは、他社が直面する5.8%以上のコスト増と比べると、はるかに軽い打撃です。
この違いは株式市場の動きにも現れました。関税発表翌日の27日、テスラの株価は約0.4%上昇しましたが、GMは7%超の下落、フォードは約4%の下落となり、部品メーカーのアプティブやボルグワーナーも5%前後の下落を記録しました。
こうした動きを受けて、バーンスタインのアナリストたちは「テスラは勝者となり、デトロイト(GMやフォードの本拠地)は血を流した」と表現しています。
ただし、テスラにとっても油断はできません。マスク氏が指摘するように、海外市場からの報復関税が発動されれば、収益の51%を海外で稼いでいるテスラにとって、長期的なダメージは避けられない可能性があります。
さらに、モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏の試算によれば、今回の関税によってアメリカ国内での自動車の平均価格が約6000ドル(約90万円)上昇する見込みです。これは消費者にとっても大きな負担となり、販売台数や需要の落ち込みに直結するとみられています。
今回の関税政策は、米国製造業の復活を掲げながらも、グローバルなサプライチェーンや消費者、さらにはアメリカ経済そのものに重い代償を強いる内容となっています。
確かに、テスラのように相対的に有利な立場にある企業もありますが、多くの自動車メーカーや関連産業はコスト増と市場縮小という逆風に直面しています。保護主義的な政策が真に「アメリカの利益」になるのか、関税発動後の市場に注目が集まります。
参考文献
NHK.「トランプ氏 25%の自動車関税署名 日本車も対象 国内影響は?」『NHKニュース』2025年3月27日. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014761851000.html
Bloomberg.「トランプ氏の関税、GMやトヨタなどメーカーの収益に打撃も-アナリスト」『Bloomberg』2025年3月30日. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-30/STUHXHT0G1KW00
Reuters.「トランプ氏、輸入車に25%関税 日本車含む 米大統領選へ保護主義色濃く」『ロイター』2025年3月26日. https://jp.reuters.com/economy/industry/576N6RFHQZKV3AWBLS322KU4OU-2025-03-26/
Yahoo!ニュース(毎日新聞).「トランプ氏が25%関税 日本車も対象 米国の保護主義強まる懸念」『Yahoo!ニュース』2025年3月27日. https://news.yahoo.co.jp/articles/b63f93f481d0dac61c1ce2f092264aa71114b5b5
(本記事は公開情報をもとに作成しています。投資は自己責任のもと、最新情報を確認したうえで検討することをお勧めいたします)
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