米FOMCの金利据え置き スタグフレーション懸念か
先週、米FOMCが政策金利の据え置きを決定。スタグフレーションのリスクが意識される中、FRBのパウエル議長の発言や経済見通しをもとに、今後の米経済と金融政策の行方をわかりやすく解説します。
先週、米FOMC(米連邦公開市場委員会)が2会合連続で政策金利の据え置きを発表し、市場ではスタグフレーションへの懸念が高まっています。
本記事では、米国投資アプリを運営するWoodstock経済部が
FOMCが金利を据え置いた背景と決定理由
スタグフレーションとは何か
今後の金利予測について
についてわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
2会合連続となる政策金利の据え置き
スタグフレーションとは
FOMCの決定と経済予測が示すリスク
関税政策がもたらすインフレと景気鈍化
アナリストの見解と市場の反応
まとめ
投資×SNSで米国マーケット情報をゲットしよう!
2会合連続となる政策金利の据え置き
2025年3月19日(日本時間20日未明)に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の発表で、米連邦準備制度(FRB)が2会合連続となる政策金利の据え置きを決定しました。
政策金利は4.25〜4.50%で維持され、市場参加者の多くが予想していた通りの結果となりました。FRBのパウエル議長は「米国経済はまだ堅調だ」と強調していますが、関税政策などが引き金となってインフレと景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」へ発展するのではないかという警戒感が広がっています。
スタグフレーションとは
スタグフレーションという言葉が最も有名になったのは1970年代です。アラブ諸国が石油禁輸措置を講じた影響で原油価格が急騰し、世界各国の物価が一斉に押し上げられました。当時の米国では、インフレを抑えるために金利を上げれば景気が落ち込み、金利を下げればインフレがさらに高進するという苦しい板挟みに陥ったのです。失業率は一時10%を超え、物価上昇率も一桁後半という高止まりが続きました。「失業率が上がっているのに生活コストまで上がる」というのは、消費者にとっても企業にとってもダメージが大きく、中央銀行としてはどの政策手段を講じても痛みを伴う、いわば最悪の組み合わせでした。
現在、FRB議長のパウエル氏は「1970年代に比べれば、いまの米国は当時ほど悲観すべき状況ではない」と繰り返し強調しています。実際、足元の米国失業率は4%台で、当時の10%超には遠く及びませんし、インフレ率も一桁後半というほど高いわけではありません。しかしながら、トランプ政権が打ち出す関税政策が予想以上にコスト上昇や個人消費の冷え込みを引き起こし、「景気の停滞」と「物価上昇」を同時に進めてしまうシナリオを警戒する声が、金融市場で着実に増えてきているのも事実です。
FOMCの決定と経済予測が示すリスク
今回のFOMC後に示された経済見通しによれば、2025年末に向けた失業率は4.4%まで上昇する可能性があるとされ、インフレ率(PCE価格指数)は2.7%に上ぶれるとの予測が示されています。さらに、実質国内総生産(GDP)の伸び率は1.7%へ下方修正されました。これは昨年12月時点で示されていた失業率4.3%、インフレ率2.5%、GDP成長率2.1%という数字よりも「雇用は悪化、物価は上昇、成長は鈍化」というスタグフレーション的な方向へ動いていると言えます。
もっとも、現時点で「すぐにスタグフレーションが到来する」と断言しているわけではありません。FRB自身も、関税によるインフレ圧力がどの程度持続するのか、もう少し時間をかけて見極めたいという姿勢を繰り返し示しています。パウエル議長は、今すぐ追加利上げや大幅な利下げに走るのではなく、当面は金利を据え置いて状況を注視する考えを強調しました。これは、景気後退を深刻化させずに物価をコントロールする、いわゆる「軟着陸」を実現したいという狙いがあるのでしょう。
関税政策がもたらすインフレと景気鈍化
トランプ政権が推し進める関税政策は、輸入品の価格を直接引き上げるため、企業のコスト増や消費者物価上昇をもたらしやすいとされています。エネルギー価格や食料品といった生活必需品への影響が大きくなれば、個人消費が急速に冷え込むリスクも高まります。企業活動のコストがかさめば投資意欲がそがれ、人員を削減する方向へ動いてしまうかもしれません。そうなると失業率が上昇し、賃金面の伸びも抑えられるため、多くの人にとっては「収入は増えないのに物価だけが上がる」という苦しい状況が訪れる可能性があります。
1970年代ほどの極端な状況には至らなくても、「高インフレ」と「景気悪化」が同時進行すれば、中央銀行が金融緩和で景気を刺激するのか、あるいは引き締めでインフレを抑えるのか、どちらに舵を切るのも難しくなるのはたしかです。
FRBが今回も金利を据え置いた背景には、安易に緩和策へ転じるとインフレに拍車をかける恐れがあり、かといって利上げの再開が早すぎれば景気をさらに冷え込ませてしまうという、微妙なバランス感覚があるのだと見られます。
アナリストの見解と市場の反応
多くの大手金融機関は、FRBが年内に利下げへ転じるシナリオを描いていますが、その回数は「0.25%幅を2回」とする見方がやや優勢な一方、「0.75%引き下げ=3回の利下げ」という強気の予測を維持するところもあります。JPモルガン・チェースは前者、シティグループやウェルズ・ファーゴの一部アナリストは後者を念頭に置きつつ、実際にどちらに近い形になるかは今後の景気指標や物価指標の動き次第だと述べています。
こうした予想は、金融先物の取引状況からFRBの政策を推定する「FedWatch(フェドウオッチ)」でもうかがえます。
上のドット・プロットは各FOMC参加者が想定する、特定の年や長期におけるフェデラルファンド(FF)金利の目標水準を示しています。横軸には2025年〜2027年と「Longer run(長期)」、縦軸にはパーセントの水準が示されており、それぞれの青い点が1名の見通しを表しています。
今回の予想では、2025年時点で依然として4%台の点が多く、そこから中期的には3%前後まで利下げが進むシナリオを想定する参加者が目立つ分布です。
現時点では「年内に2回利下げを行う」という見方が3割強、「3回利下げ」という見方が3割弱と拮抗しており、市場がFRBの姿勢に注目しながらも確信を持ちきれていない様子が見て取れます。
まとめ
FOMCが金利を据え置いた今回の決定は、トランプ政権の関税措置をはじめとする経済環境の変化をしばらく見極めたいというFRBの意向を色濃く反映しています。FRBは、当面はインフレと景気の両方を慎重に管理しながら、どこかの時点で利下げを始める可能性を残しているように見えますが、そのタイミングや幅を間違えばスタグフレーションに近い形で痛みを強めるリスクも否定できません。
1970年代のように失業率と物価上昇率がどちらも二桁に迫る「本物のスタグフレーション」が訪れるには、まだ大きな隔たりがあるという見解が優勢です。しかし、失業率4.4%、インフレ率2.7%、GDP成長率1.7%という数字の組み合わせが、上振れや下振れの方向へわずかに触れるだけでも市場心理は敏感に反応します。
FRBは次回5月の会合までに公表される経済指標を細かく分析しつつ、もし関税政策が予想外に長期化・拡大する兆候があれば、より積極的な対応を検討せざるを得なくなる可能性が高いでしょう。
「景気が後退しているのに物価は上がり続ける」というシナリオは、家計や企業に深刻な打撃を与えます。FRBの金融政策がうまく舵取りを行えるかどうかは、私たちの生活コストや雇用環境にも大きくかかわってきます。スタグフレーションという言葉が取りざたされるほど、中央銀行の政策運営は難易度を増し、市場の動きも予想外の方向へ振れるリスクが上がります。
次回のFOMCやそれ以降に予定される経済指標の発表を通じて、FRBが悪夢を回避するための有効な道筋をどのように示していくのか、今後も目が離せない状況が続きそうです。
参考文献
Gillespie, P. (2025, March 20). Stagflation explained: What it means and why it’s feared. CNN Business. https://edition.cnn.com/2025/03/20/business/stagflation-explained/index.html
日本経済新聞. (2025年3月19日). 米FRB、政策金利を据え置き スタグフレーション懸念も. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL191010Z10C25A3000000/
Franck, T. (2025, March 19). Stagflation? Fed sees higher inflation and an economy growing by less than 2% this year. CNBC. https://www.cnbc.com/2025/03/19/stagflation-fed-sees-higher-inflation-and-an-economy-growing-by-less-than-2percent-this-year.html
(本記事は公開情報をもとに作成しています。投資は自己責任のもと、最新情報を確認したうえで検討することをお勧めいたします)
投資×SNSで米国マーケット情報をゲットしよう!
「投資はまだ勉強してから...」と勉強をしっかりしてから取り掛かろうと思っていたら一年が終わっていた...という方も多いかと思います。投資って難しそうだし、損をしたくないという思いからそのような決断になるのは当然です。
しかし、投資に関して気軽に質問できる場があればそのハードルは大きく下がるのではないでしょうか。
woodstock.club(ウッドストックアプリ)を活用すれば、米国市場に関する情報を集めると同時に、実際に米国株を200円からコツコツと始めることができます。
米国市場に参加している投資家たちの生の声を聞けたり、トレンドを抑えることができます。
さらに、ウッドストックアプリではリアルタイムに他のユーザーの売買をチェックすることができます。この機能を使えば、まさしく「今、この瞬間何がトレンドなのか」が一目でわかります。
ウッドストックアプリは、以下のような特徴があります。
200円という少額で始めることができる。
SNS機能でリアルタイムな意見を集められる
他のユーザーがどんな株を売買しているのかリアルタイムで確認できる
他のユーザーのポートフォリオをチェックできる
ユーザーの半数はZ世代 などなど他にも盛りだくさん!
弊社のwoodstock.club(ウッドストック)アプリは無料で始めることができ、口座解説もたったの2分ちょっとで完了します。
今年こそ新しいことを始めたい!と思っている方は、是非チェックしてみてください👇