NVIDIA決算過去最高 AI半導体ブームはまだ続く?
2025年2月26日に発表されたNVIDIAの決算は、売上・利益ともに市場予想を上回る好調な内容でした。データセンター向けAI半導体の需要が爆発的に拡大し、売上は前年同期比93%増と大きく成長。しかし、株価は期待ほど伸びず、むしろ下落。 AI半導体ブームはまだ続くのか? 現在の半導体市場についてわかりやすく解説します。
先週26日、半導体大手NVIDIAが決算を発表しました。決算は好調でしたが、株価は一時下落しました。
本記事では、米国投資アプリを運営するWoodstock経済部が
NVIDIAの決算は何が良かったの?
なぜ株価上昇に繋がらなかったのか
半導体ブームはまだ続くのか?
ということについてわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)
目次
エヌビディアの決算は過去最高
好調だった分野と成長要因結果に反して株価は下落
株価が期待ほど上昇しなかった理由エヌビディアはトランプ関税の影響を受ける?
AI半導体ブームはまだ続く?
1. エヌビディアの決算は過去最高
米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)が2025年2月26日に発表した2025会計年度第4四半期(2024年11月~2025年1月)決算は、売上高・利益ともに市場予想を上回り過去最高を更新しました。
第4四半期の売上高は393億3,100万ドルで前年同期比78%増(前四半期比+12%)と急拡大し、市場予想(380億5,000万ドル)を上回りました。
純利益(GAAP)は220億9,100万ドル(前年同期比80%増)とこちらも大幅増益で、1株当たり利益(EPS)は$0.89でした。非GAAPベースのEPSも$0.89で、市場予想の$0.84を上回っています。通期(2024年2月~2025年1月)でも売上高1,305億ドル(前年+114%)、純利益729億ドル(前年+145%)と記録的な成長を遂げました。主要指標を見る限り、“AI需要バブル”とも呼べる追い風を受けた絶好調の決算内容でした。
セグメント別に見ると、データセンター向け事業が売上全体の9割超を占めており、成長を牽引しています。
第4四半期のデータセンター売上高は356億ドルと前年同期比93%増の急成長で、四半期ベース/通年ベースともに過去最高を更新しました。
クラウドサービス大手による生成AIインフラ投資ラッシュを背景に、AI用途向けGPU(H100や新型「ブラックウェル」など)の需要が爆発的に拡大したことが要因です。実際、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなど主要クラウド事業者がNVIDIA製AIシステムを相次ぎ導入しており、第4四半期だけで数十億ドル規模のブラックウェル関連売上を計上したとされています。
一方、ゲーム(ゲーミング & AI PC)部門の第4四半期売上高は25億ドルと前年同期比11%減となり、やや低調でした。仮想通貨需要の反動や次世代GPU発売直前の買い控えもあり、市場予想の30億ドルを下回りました。ただし2025年1月に発売が始まった新世代「GeForce RTX 50シリーズ」への需要は非常に旺盛で、対応グラフィックスカードが品薄になる状況が続いています。これは次期四半期以降のゲーミング部門の回復材料といえそうです。
その他の小規模セグメントも着実に伸びています。プロフェッショナル・ビジュアライゼーション(クリエイター向けGPU等)は5億1,100万ドル(前年同期比+10%)、オートモーティブ & ロボティクス(自動運転・組込向け)は5億7,000万ドル(前年同期比+103%)と、絶対額は小さいものの前年比で倍増する成長を見せました。特に自動車分野ではトヨタや現代自動車との提携を通じ、車載AIプラットフォーム「NVIDIA DRIVE」やロボット向けAI基盤「Jetson」シリーズが好調で、将来の収益源として期待されています。
好調だった分野と成長要因
今回の決算で特筆すべきは、データセンター向けAI事業の飛躍的な伸びです。生成AI(Generative AI)の普及で、大手テック企業はAIインフラ構築に数百億ドル単位の巨額投資を競い合っています。この旺盛な需要を受け、エヌビディアの最新AI半導体「ブラックウェル」を搭載したGPUやAIスーパーコンピュータが爆発的に売れ、第4四半期のデータセンター事業は前年のほぼ2倍に拡大しました。
黄仁勲(ジェンスン・フアン)CEOも決算発表で「ブラックウェルの需要は驚異的であり、初の四半期で数十億ドルの売上を達成した」「AIは光速で進化しており、我々はブラックウェルAIスーパーコンピュータの大規模生産を成功裏に拡大した」と述べ、AI需要の追い風に自信を示しています。
また、自動車・ロボティクス分野も好調でした。売上規模はまだ小さいものの、前年同期比+103%という高成長を遂げています。大手自動車メーカー各社が自動運転や車載AIへの対応を急ぐ中、エヌビディアの「Orin」車載SoCやシミュレーション基盤「Omniverse」への引き合いが強まっています。トヨタは次世代車両にNVIDIAのプラットフォーム採用を決定し、現代自も製造やロボティクス領域で協業を開始するなど、AI×自動車分野での存在感が増しています。今期以降、これら新規分野がどこまで収益に寄与するかも注目ポイントです。
2. 結果に反して株価は下落
決算発表を受けた株式市場の反応は、当初こそポジティブでしたが、その後失望売りに転じました。発表当日(2月26日)の通常取引でエヌビディア株は前日比+3.7%上昇し、時間外取引でも一時1%高となりました。
しかし翌27日の米市場では一転して8%以上の急落となり、NASDAQ指数を大きく押し下げてました。決算内容自体は予想超えの増収増益にもかかわらず、投資家は「AIブームで高騰した株価に織り込み済みで、サプライズが乏しい」と受け止めたようです。実際、エヌビディア株はこのところ上昇が一服しており、決算発表を契機に利益確定の売りが優勢となりました。
マーケットの評価としては強弱まちまちです。決算発表直後の27日には「過熱感が後退し関連株の底入れはまだ先」との慎重な見方が出る一方、「ブラックウェル量産の本格化で懸念払拭、半導体株は引き続き市場を支える柱」との強気な声もありました。総じて言えば、「予想通りの好決算だったが想定以上の驚きはなかった」というのが市場のコンセンサスだったようです。そのため株価は好材料出尽くしと受け止められ、2023~2024年のAIブーム時に見られたような派手な上昇には繋がりませんでした。
決算翌日に他の“マグニフィセント・セブン”(米大型ハイテク7銘柄)の株価も軒並み下落したことから、今回の結果がハイテク市場全体に与えたインパクトは限定的だったと言えます。
株価が期待ほど上昇しなかった理由
エヌビディアの株価が決算発表後に期待ほど上昇しなかった背景には、主に5つの要因があると考えられます。
【成長ペース鈍化への懸念】:2024年に前年比2~3倍という異例の成長を遂げた反動で、今後の伸び率は平常化していく見通しです。
によれば、同社が示した2025年2-4月期の売上ガイダンス(約430億ドル)は前年比+65%程度の増収を見込むものですが、これは昨年まで続いた「前年比3ケタ増」から減速する水準です。市場はこの成長率の減速傾向に敏感に反応しました。「NVIDIAの成長率は今後鈍化していく」という見方が広がったことが、株価上昇を抑えた一因です。【株価の織り込み済み感】:エヌビディア株は2024年を通じて約10倍近い急騰(時価総額3兆ドル超え)を遂げており、足元の株価には相当程度の好材料が織り込まれていました。決算前から期待値が極めて高かったため、「予想通り良い」程度ではサプライズとならず、材料出尽くしと受け止められました。言い換えれば、「高すぎるハードルを越えられなかった」ことが株価の失望売りを招いた面もあるでしょう。
【利益率低下と見通し】:第4四半期のGAAP粗利益率は73.0%と前年同期比でやや低下し、さらに翌第1四半期(2025年2-4月期)の粗利益率見通しは約71%と予想されています。これは市場予想の72.2%を下回る水準であり、最新鋭チップ量産に伴うコスト増がマージンを圧迫する見込みです。エヌビディアは生産規模拡大でコスト低減し、年内に粗利率を75%前後へ回復させる計画としていますが、短期的には利益率縮小への懸念が株価の重しとなりました。
【「AI投資ブーム減速」への警戒】:直近、中国の新興企業DeepSeekが極めて低コストで高性能を発揮するAIモデルを発表したことで、「大手各社がNVIDIA製高価GPUに巨額投資を続ける流れが減速するのでは」との不安が広がっていました。実際、2025年1月にはこうした懸念からNVIDIA株が1日で6,000億ドル以上もの時価総額を失う急落も経験しています。今回の決算で強気の需要見通しが示されたとはいえ、投資家の一部には「将来的にAI開発コストが劇的に下がれば、現在のようなGPU需要に陰りが出るのではないか」という疑念が残りました。このAIブームの持続性に対する疑念が、決算後の株価上昇を抑制したと考えられます。
【外部要因(政策リスク)】:後述するように、決算発表直後に浮上した米国の関税政策リスクも市場心理を冷やしました。特に27日にはトランプ政権による対中関税強化の報道が伝わり、ハイテク株全般に売りが広がる中でNVIDIA株の下げ幅拡大につながりました。このように業績以外の要因も重なり、決算後の株価は上値の重い展開となったのです。
半導体関連全体が下落傾向?
世界の半導体市場全体を見ても、2024年の空前の盛り上がりから2025年初にかけて調整局面に入っています。昨年は生成AIブームを追い風に関連株が急騰し、半導体売上も前年比+19%と二桁成長しましたが、足元では需要動向にばらつきと陰りが見え始めています。PC・スマートフォン向けの半導体需要は引き続き低迷ぎみで、メモリ価格も依然として低調です。一方、クラウドや自動車向けの需要は底堅く、「AI/データセンター特需」VS「他分野の停滞」という二極化が進んでいます。
株式市場では、主要ハイテク株(マグニフィセント・セブン)の多くが2024年末のピークから調整局面に入りました。
特にNVIDIA株は上述のとおり高値圏から8%超下落し、他の半導体株(TSMCやサムスン電子など)も連れ安になる場面が見られています。市場参加者の心理も熱狂から冷静へシフトしつつあり、「AI関連株は一旦ピークを過ぎた」との声もあります。
内藤証券の田部井氏は「単なる期待先行から実際にどれだけ利益を上げられるかに市場の関心が移っている。先行き慎重論は継続し、半導体関連株の底打ちはまだ期待しにくいのではないか」と述べています。実際、直近数ヶ月はAI関連の好材料が出ても株価反応は限定的となり、一進一退の展開が続いています。
もっとも、半導体セクター全体が弱気相場入りしたわけではないとの見方も根強く存在します。
大和証券の木野内氏は「ブラックウェルの量産本格化でデータセンター株に漂っていた暗雲が払拭された。半導体株は今後も市場全体の支柱になる」とコメントしており、実際にエヌビディア決算を受けて東京市場でも半導体関連株は粘り強い推移を見せました。
つまり、「短期的な調整」と「長期的な成長期待」が綱引きしている状況と言えるでしょう。2025年通年の半導体市場成長率については、米半導体工業会SIAは二桁成長を予測する一方、一部調査会社は「わずか6%成長に留まるとの慎重な見通しも発表しており、意見は分かれています。
少なくとも短期的には株式市場のボラティリティが続く可能性が高く、各企業の業績動向や在庫調整の進捗を見極める局面が続きそうです。
3. エヌビディアはトランプ関税の影響を受ける?
2025年に政権に復帰したトランプ大統領の貿易政策は、半導体業界に新たなリスク要因をもたらしています。トランプ政権は2月下旬、メキシコ・カナダからの輸入品への関税導入と併せて、中国からの輸入品全般に追加10%の関税を課す方針を表明しました。
さらに半導体チップそのものに対しても25%の関税を課す計画を打ち出しており、この措置は台湾製のチップにも適用される見込みです。エヌビディアのGPUは台湾TSMCで製造され米国に輸入されているため、この関税が実施されれば製品コストが一挙に25%上昇し、価格転嫁やマージン圧迫は避けられません。
トランプ大統領は「米国内で生産される限り関税は課さない」と述べ、外国企業に米国工場への生産移管を促しています。実際「台湾(TSMC)に奪われた半導体生産を米国に取り戻す」とし、台湾製チップに対し最大100%もの関税も示唆する強硬姿勢を示しました。このような保護主義的政策が現実となれば、エヌビディアを含む業界全体に大きな打撃となるでしょう。
また米中対立の文脈では、対中輸出規制も重要なポイントです。2022年以降、米政府は最新のAI半導体を中国に輸出することを厳しく制限しており、エヌビディアも中国向けには性能を落とした専用GPU(A800やH800シリーズ)しか販売できない状況です。トランプ政権も対中強硬姿勢を維持するとみられるため、中国市場で最新GPUを販売できないハンデは今後も続く可能性があります。中国はエヌビディアにとって大きな潜在市場ですが、地政学リスクにより十分に開拓できない状態が続けば、中長期的な成長シナリオに制約となり得ます。
このように、貿易摩擦や規制強化といった政策リスクが再燃している点は、エヌビディアにとって注意が必要です。ただ裏を返せば、米政府の半導体産業育成策(補助金や税優遇)は追い風でもあります。トランプ政権の関税圧力は国内生産回帰を促す狙いがあり、TSMCやサムスンは米国への生産拠点シフトを加速させています。長期的にはサプライチェーン再編が進み、エヌビディアもリスク分散のため生産戦略の見直しを迫られるでしょう。
4.AI半導体ブームはまだ続く?
エヌビディアの成長は依然として力強く、AI需要の拡大が追い風となっています。2025年2~4月期の売上も430億ドル前後と強気の見通しを示しており、AIブームはまだ続いていることが確認できました。技術面でも、CUDAやAIソフトウェアのエコシステムにより、競合他社を大きくリードしています。豊富な資金を活かし、さらなる研究開発や投資を進める余地もあります。
しかし、今後は成長スピードが落ち着く可能性もあります。売上の伸びは前年同期比50~60%程度に鈍化する見込みで、市場の高い期待を維持できるかが課題となるでしょう。また、競争環境が激化しており、AMDやインテルがAI向け半導体を強化するほか、GoogleやAmazonも独自AIチップの開発を進めています。さらに、DeepSeekのようなAIが今後も開発されることで、高性能GPUを必要としなくなる可能性もあります。
半導体市場全体は、AI・データセンター・自動運転が引き続き成長を牽引すると見られています。市場予測では、2020年代半ばまでに年平均7~10%の成長が続くとされ、エヌビディアにとっても、自動運転やメタバース、ロボティクスといった新分野が今後の成長の柱となるでしょう。
総じて、エヌビディアの長期成長の基盤はしっかりしているものの、短期的な株価の変動や競争環境の変化には注意が必要な状況だと言えます。
参考文献
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Reuters Japan. (2025, February 27). エヌビディア好決算も市場の反応は冷ややか、AI関連株に暗雲. Retrieved from https://jp.reuters.com/economy/UJFWC2ZKN5NG7MXS4DH4EW73TI-2025-02-27
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App Economy Insights. (2025, February 27). AI growth fuels NVIDIA’s data center revenue. Retrieved from https://x.com/EconomyApp/status/1895128668630065580
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