NVIDIA CEO「ストレージ市場は未開拓」関連株が急騰
NVIDIA CEO ジェンスン・フアンがCES 2026での発言をきっかけに、ストレージ関連株が軒並み急騰しました。なぜストレージ関連株が伸びたのか、その背景を解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)目次
NVIDIAフアン氏が語る次の課題
サンディスク、ウエスタンデジタルなどが軒並み高値更新
ストレージ市場に新時代来るか
NVIDIAフアン氏が語る次の課題
ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」で、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが強調したのは、GPUを支える「足腰」の重要性でした。
これまで生成AIブームの主役といえば、間違いなくGPUでした。そうした市場の見方に変化を与えたのが、今回のCESで語られた「ストレージ」の話題です。ロイターなどによれば、フアン氏はストレージを「completely unserved market today(現状では満たされていない市場)」と表現し、AIの進化において計算力だけでは不十分になりつつある、という趣旨を示しました。
さらに注目を集めたのが、NVIDIAが発表した新しいストレージ基盤「NVIDIA Inference Context Memory Storage Platform」です。これはBlueField-4データプロセッサーを中核とし、AIが長い文脈(コンテキスト)を扱うことを前提に設計された、AIネイティブなストレージインフラだと説明されています。
生成AIが、単発の受け答えにとどまらず、より長い対話や複数手順のタスク処理へ広がるほど、推論中に参照されるコンテキストデータ(KV cacheなど)の扱いが重くなります。NVIDIAはこの点を踏まえ、GPUだけに抱え込ませずにGPUメモリ容量を拡張する形でコンテキストメモリを持ち、ノード間で高速共有できる仕組みを提供するとしています。
今回の発表は、AIインフラの注目領域がGPU単体から、メモリ/ストレージを含む周辺領域へ広がる可能性を示すものとして、市場に受け止められました。結果として、高速SSDや大容量HDDといった“データの置き場”を担う企業群にも関心が集まった形です。
サンディスク、ウエスタンデジタルなどが軒並み高値更新
この「AIストレージ需要」の顕在化に市場は即座に反応しました。フアン氏の発言が報じられた直後の株式市場では、関連銘柄への買い注文が殺到し、記録的な上昇を見せました。
特に凄まじい動きを見せたのが、NAND型フラッシュメモリ(SSD)を手掛けるサンディスク($SNDK)です。報道によれば、同社株は一時27%超も急騰し、最高値を更新しました。
また、HDD(ハードディスク)とSSDの両方を手掛けるウエスタンデジタル($WDC)も一時17%高、HDD最大手のシーゲイト・テクノロジー($STX)も14%高、そしてDRAMとNANDの「二刀流」であるマイクロン・テクノロジー($MU)も10%高と、セクター全体が底上げされる展開となりました。
この株価急騰は、長らく「市況商品(コモディティ)」として扱われ、景気敏感株としての側面が強かったメモリ・ストレージ企業にとって、完全に新しい評価軸が生まれたことを意味します。
これまでは「スマホやPCが売れないと業績が悪い」と見られがちだったこれらの企業が、今後は「AIデータセンターに必須のインフラ企業」として、高い成長期待(バリュエーション)を付与される可能性が出てきたのです。
なぜ市場はこの発言をこれほど好意的に受け止めたのでしょうか。
その理由の一つは、投資家たちが懸念していた「AI開発のボトルネック」に対する明確な解決策が示されたからです。
AIモデルが推論を行う際に生成される「KV cache(キー・バリュー・キャッシュ)」と呼ばれる一時データは、文脈が長くなるほど、推論中に参照される一時データ(KV cacheなど)は大きく増え、GPU側のメモリ容量やコストがボトルネックになり得ます。これを高価なGPUメモリ(HBM)だけに頼って保持するのはコスト的にも容量的にも限界が見えていました。
今回NVIDIAが「ストレージ層を活用してコンテキストを管理する」という方向性を打ち出したことで、「SSDやHDDの需要は、AIの進化と共に爆発的に増える」という連想が確信に変わりました。これまで「計算の脇役」と思われていたストレージが、「AIの長期記憶」という重要な役割を与えられたのです。
これにより、市場では「HBM(広帯域メモリ)ブーム」に続く、「AIストレージブーム」の幕開けではないかという期待が広がり、投機的な買いも含めて資金が流入したと評価されています。
ストレージ市場に新時代来るか
ここで、今回注目されたストレージ関連企業のこれまでの軌跡を振り返ってみましょう。メモリ・ストレージ業界は「シリコンサイクル」と呼ばれる激しい好不況の波に翻弄され続けてきました。
かつて、サンディスクやウエスタンデジタル、マイクロンといった企業は、PCやスマートフォンの普及と共に成長してきました。しかし、2022年から2023年にかけては、コロナ禍特需の反動による深刻な在庫過剰に苦しみ、株価も低迷を余儀なくされました。製品単価の下落が止まらず、各社とも減産や赤字決算を強いられる「冬の時代」が続いていたのです。
しかし2024年以降、生成AIの登場が潮目を変えます。当初はSKハイニックスなどが手掛ける「HBM(広帯域メモリ)」だけが脚光を浴びていましたが、AIデータセンターの建設ラッシュが進むにつれ、汎用的なDRAMやNAND(SSD)の需給も引き締まり始めました。
さらに、今回のCES 2026での動きは、これまで「時代遅れ」になりつつあると思われていたHDD(ハードディスク)の価値さえも見直させました。AI学習にはテキスト、画像、動画など人類が生み出した全データを読み込ませる必要があり、その膨大なデータを安価に保存できるのは、今のところHDDをおいて他にないからです。
ロイターは1月5日付けの記事で、AIインフラ需要の急増による世界的な供給逼迫がメモリ株の買い材料になっていると報じました。さらに1月8日には、SamsungがAI需要と供給不足を背景に四半期利益の大幅増を見込むと報じられるなど、業界全体に「スーパーサイクル(長期的な好景気)」の波が押し寄せています。
こうした中で飛び出したフアン氏の発言は、回復基調にあった市場にガソリンを注ぐ格好となりました。単なる市況回復ではなく、「AIエージェント」という新たな技術トレンドが、今後数年にわたってストレージ需要を牽引するというストーリーが完成しました。
今回のNVIDIAの発表とフアンCEOの発言により、AIインフラの焦点がGPUだけでなく、メモリやストレージを含む周辺領域へ広がりつつあることが、改めて意識されました。生成AIが「長い文脈を扱う」方向へ進むほど、データを素早く出し入れし、膨大な情報を保持する基盤の重要性は増していきます。今後、AIの進化がストレージの技術開発や需要構造をどのように変えていくのか、引き続き注目されます。
参考文献
Nellis, S.(2026年1月6日). Nvidia CEO Huang says next generation of chips is in full production. Reuters.
https://www.reuters.com/world/china/nvidia-ceo-huang-take-stage-ces-las-vegas-competition-mounts-2026-01-05/NVIDIA Corporation.(2026年1月5日). NVIDIA BlueField-4 Powers New Class of AI-Native Storage Infrastructure for the Next Frontier of AI. NVIDIA Investor Relations.
https://investor.nvidia.com/news/press-release-details/2026/NVIDIA-BlueField-4-Powers-New-Class-of-AI-Native-Storage-Infrastructure-for-the-Next-Frontier-of-AI/default.aspx





