NVIDIA、韓国に26万基のAIチップ供給へ
エヌビディアが、韓国政府やサムスンなどに計26万基超の最先端AIチップへの供給を発表。国家主導の「ソブリンAI」と工場横断の「AIファクトリー」を軸に、データセンターから製造・モビリティまでAI実装を一気に加速させる狙いです。NVIDIAの時価総額が一時5兆ドルを超えるなど勢いを加速させています。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)目次
“26万基超”の最先端AIチップで韓国のAI基盤を底上げ
なぜ韓国にNVIDIA?
米中対立の“はざま” 輸出規制と中国市場の行方
確実な需要を取りにいくNVIDIA
“26万基超”の最先端AIチップで韓国のAI基盤を底上げ
韓国・慶州で開かれたAPECのCEOサミットにて、NVIDIAは韓国の科学技術情報通信省、サムスン電子、現代自動車グループ、SKグループなどと連携し、最先端のAIアクセラレーターを合計26万基超供給する方針を明らかにしました。
また、先週NVIDIAは世界初の時価総額5兆ドルに達するなど成長し続けている強さを見せました。
アナリスト42人によるアルファベットの評価は「強い買い」となっています(Benzinga)。(*アナリスト評価は、特定の株式の取引を推奨するものではありません。)
今回の狙いは、国内のAIデータセンターから製造現場、さらにはモビリティ(自動運転など)に至るまで、広範囲にわたって高性能な計算資源を行き渡らせることです。ここで言うアクセラレーターとは、生成AIや大規模モデルの学習・推論を高速にこなす専用プロセッサ群(GPUなど)のこと。AIの心臓部にあたります。
今回の枠組みには、韓国政府が主導する「ソブリンAI」(自国が主権的に管理する計算インフラ)の構築が含まれます。国立のAIコンピューティングセンターに加え、KakaoやNAVER、NHN Cloudなどの国内事業者のデータセンターにもNVIDIAの最新GPUが多数導入される見通しです。
民間側では、サムスン電子が「AIファクトリー」構想の中核として5万基超を投入し、設計・製造・検査・物流にAIを縦横に組み込む計画が伝えられています。NAVER Cloudは約6万基でAI基盤を拡張し、国立センターやクラウド/IT事業者に約5万基、さらにSKグループや現代自動車グループにも大規模な配分(報道では5万基規模)が見込まれています。
合計の「26万基超」という規模からも、単なる単発の設備導入ではなく、国家と複数企業が同時多発的にAI基盤を底上げするプロジェクトであることがうかがえます。
ジェンスン・フアンCEOは、こうした計算資源を使って工場や物流拠点の「デジタルツイン」(現実世界の精密な仮想コピー)を構築し、設計・生産・保守の意思決定をより速く賢くする全体像を示しました。
例えば、新製品の設計変更を仮想空間で素早く検証し、ボトルネックが見つかれば現場のラインに即座に反映――こうしたサイクルをAIが支えることで、製造やモビリティの現場に“データで回る仕組み”が根づいていく、というわけです。NVIDIAにとっても、各セクター(製造・クラウド・自動車・公共)の同時立ち上げは製品群の総合力を示す格好の舞台となります。
なぜ韓国にNVIDIA?
NVIDIAが韓国をAIインフラ拡大の要地に据える理由はなんなのでしょうか。いくつか考えられている理由をみてみましょう。
第一に、メモリーと製造の厚みです。韓国はサムスン電子とSK hynixという世界的なメモリー大手を擁し、AIサーバーに不可欠な高帯域メモリー(HBM)などの供給で存在感があります。AIの演算性能はGPUだけでは完結せず、巨大なモデルを滞りなく動かすにはメモリーの帯域・容量が鍵を握ります。韓国の部材・製造エコシステムは、その“詰まりやすい部分”を太く支える位置にあります。
第二に、建設・電力・用地面での実行力です。大型データセンターは電力確保や冷却、ラックの密度設計など、複数の制約条件を満たさなければなりません。フアンCEOが「土地も電力も製造拠点を短期間で立ち上げる力もある」と評価したのは、単なるお世辞ではなく、実際に短期に設備を立ち上げられる実績があるからです。データセンターの立ち上げが遅れれば、AIモデルの学習・推論の需要があっても処理能力が追いつかず、機会損失につながります。逆に、供給を先回りで確保できる地域は、AI実装のスピードで優位に立ちやすいのです。
第三に、サプライチェーンとの地理的・機能的な親和性です。NVIDIAは“設計に特化したファブレス”で、製造はTSMCやサムスンなどの半導体メーカーが担います。最新モデル(例:Blackwell)の量産をTSMCが中核で支える一方、サムスンは特定の派生品や周辺部材、SK hynixはHBMを含むメモリーで重要な役割を果たします。
つまり、設計拠点(米)と製造・部材の要(韓国・台湾)が「短い距離」で密連携できること自体が、製品の立ち上げ速度の改善を可能にし、そして需要側の迅速な展開に直結します。
そして第四に、韓国側の国家戦略です。
韓国は米中に次ぐ「第三のAI強国」を掲げ、主権的に管理できる計算資源――すなわちソブリンAI――の整備に舵を切りました。つまり、国外クラウドへの全面依存を避けつつ、機密データを国内で安全に扱い、低遅延でAIを回す狙いがあります。
政府・財閥・クラウド事業者が同じロードマップを共有することで、調達や実装の意思決定が一本化され、大規模な需要が一気に立ち上がる構造が生まれます。NVIDIAにとっては、GPUからネットワーク、ソフトウェアまで製品群をパッケージで投入しやすい“理想的な受け皿”になるわけです。
この構図は韓国だけはありません。NVIDIAは同様の発想で、米エネルギー省やNokia、Uber、Stellantisといった相手とも連携を広げ、国家級・業界横断のプロジェクトを各地域で積み上げています。こうした“塊需要”の連鎖が成長ストーリーへの期待を後押しし、同社の時価総額は5兆ドルに達しました。
米中対立の“はざま” 輸出規制と中国市場の行方
いまNVIDIAは、米中対立と規制の直撃を受けています。
フアンCEOは慶州(キョンジュ)で、「かつて中国AI市場のシェアは95%だったが、現在は0%になった」と明言しました。もともと中国は前年の売上の1割超を占める重要市場でしたが、米国による先端AIチップの対中輸出規制に加え、中国側の購入制限や国内調達の促進が重なり、販売が実質的に止まっています。
こうした環境を受け、HuaweiやAlibabaが代替となる自社開発チップを相次いで打ち出すなど、「NVIDIA抜きでも回す」動きが広がっているというわけです。
一方で、政策の不確実性は残ったままです。フアン氏は「NVIDIAの技術が中国にあることは米中双方の利益」と述べ、最新世代Blackwellの対中販売にも前向きな姿勢を示しています。
ただし最終判断は米大統領に委ねられるとの立場で、慶州でのAPEC期間中の米中首脳会談でもNVIDIAのチップが話題に上り、トランプ大統領は“米政府はレフェリー役”にとどまるとしつつ、中国側とNVIDIAが販売協議を進める可能性に言及しました。つまり、政府間の交渉が企業活動を直接左右する局面が続いています。
この不確実性に対して、NVIDIAは他地域の確実性の高い需要で埋める動きを強めています。今回の韓国との合意により、合計26万基の先端チップを国家・大手企業・クラウド事業者が一体で調達し、短期間で実装する“塊需要”を形成しました。
こうした枠組みでは、NVIDIAはGPUだけでなくネットワークやソフトウェアまで“パッケージ”で展開しやすく、短期での実装・運用までを見据えた供給が可能になります。
先行きの筋書きは大きく三つ考えられます。
規制が継続:対中販売は限定的のまま。韓国のような国家級プロジェクトが主な成長エンジンに。
一部緩和:性能や用途で線引きを設けつつ、段階的に対中販売が再開。地域ミックスが再び多様化。
追加規制:地政学リスクが増し、サプライチェーン再編と“ソブリンAI”志向が一段と強まる。
いずれのシナリオでも、計算資源を国内で確保・運用する枠組み(例:韓国のソブリンAIやAIファクトリー)の重要度は高まります。今回の26万基合意は、中国の不確実性に左右されにくい“地域別の確実需要”を積み上げる具体策として位置づけられる――ここが押さえどころです。
確実な需要を取りにいくNVIDIA
今回の合意は、単体企業の設備更新を超え、国家と大企業群が同時にAI計算基盤を底上げする“面展開”である点が最大の特徴です。NVIDIAは設計力とソフトウェア基盤(CUDAなど)、そして広がる国際提携をテコに存在感を強め、韓国はソブリンAIという選択を通じて自国でAIを動かす主権的能力を高めようとしています。
今後は、新規のデータセンターやAIファクトリーの立ち上げ時期、確実性のある取引の拡大、そして中国との取引に注目です。
参考文献
Tripp Mickle. “Nvidia Is Now Worth $5 Trillion as It Consolidates Power in A.I. Boom.” The New York Times, October 29, 2025. https://www.nytimes.com/2025/10/29/technology/nvidia-value-market-ai.html. democraticunderground.com+1
Suranjana Tewari, Osmond Chia. “Nvidia strikes bumper AI deals with Asia tech giants.” BBC News, October 31, 2025. https://www.bbc.com/news/articles/cyv862r7l2ro. feeds.bbci.co.uk
Ian King, Yoolim Lee. 「エヌビディア、韓国の代表的企業とAIで大型契約-半導体を供給」『Bloomberg(日本語版)』2025年10月31日。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-31/T4ZFF8GP493500.
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