スニーカー「On」株価急騰 アジア人気強く
スイス発スニーカーブランドOn(オン)の株価が決算発表をきっかけに5日で一時約18%急騰。アジア発の人気と好業績の背景をわかりやすく解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)目次
On Holding 株価 一時18%急騰 背景は?
Onってどんなブランド?
アジアで広がるOn — 中国・日本・韓国
Onが描くこれから
On Holding 株価 一時18%急騰 背景は?
On Holding(ONON)は、ニューヨーク証券取引所に上場しているスイスのスポーツブランドです。2025年11月に発表された第3四半期決算では、売上高が7億9,440万スイスフランと前年同期から約25パーセント増加し、市場予想を上回る結果となりました。粗利益率も65パーセント台まで伸び、前年から大きく改善したことが公式リリースで示されています。
この好決算を受けて、Onの株価は決算発表直後の取引でおよそ18パーセント前後急上昇しました。同時に、会社側は通期の売上成長見通しも引き上げ、為替の影響を除いたベースで34パーセント増という強気の予想を示しました。
投資家が注目したポイントは、売上の伸びだけでなく、その「稼ぎ方」の部分だと言われています。価格を大きく下げることなく、むしろ一部の商品は値上げしながらも、お客が離れずに買い続けていることが数字から見えてきました。米国の追加関税で仕入れコストが重くなるなかでも、Onは税込み価格にそれを織り込みつつ、粗利益率を65パーセント超まで押し上げています。
一方で、同じスポーツ・アパレル業界全体の株価は、それほど元気があるとは言えません。S&P500の「繊維・アパレル・高級品」業種指数は、2025年年初から秋までのあいだで2割前後のマイナス圏にあるというデータも出ています。ナイキは売上の減少や在庫調整に追われ、ルルレモンも需要の鈍化と関税負担で業績見通しを下方修正し、株価が大きく下がったと報じられました。
こうした「業界全体の逆風」のなかで、Onは売上も利益も伸ばし、さらにアジアを中心に海外売上を急拡大させています。だからこそ、「同じセクターの中でも、かなり特別な存在」と意識され、その評価の変化が株価急騰というかたちで表面化したという流れです
では、そもそもOnというブランドはどんな会社なんでしょうか
Onってどんなブランド?
Onは2010年にスイスのチューリッヒで生まれたブランドです。創業者たちは、「雲の上を走っているような感覚」を追い求めて、独自のソール構造「CloudTec(クラウドテック)」を開発しました。
街で見かけるOnの靴を思い出してみると、底の部分が丸くくりぬかれたような、独特の形をしているのに気づくと思います。あの穴の開いた“雲”のようなパーツがCloudTecで、着地の瞬間には柔らかくつぶれて衝撃を吸収し、蹴り出すときにはバネのように戻ることで推進力を生み出す仕組みになっています。
見た目にもインパクトがあり、遠くから見ても「あ、Onを履いているな」とわかるので、ランナーにとっては機能性、街ゆく人にとってはファッションとしてのわかりやすさ、どちらの面でも差別化しやすいのが特徴です。
ブランドの知名度が一気に上がったきっかけのひとつが、テニス界のレジェンドであるロジャー・フェデラーの参加です。彼は2019年にOnへ出資し、自身の名前を冠したシューズの開発にも関わっています。また、近年は女優のゼンデイヤや、ファッションブランドのロエベとのコラボレーションも話題となりました。
こうした背景もあり、Onのシューズは一般的なスポーツシューズよりやや高めの価格帯に位置づけられています。それでも、先ほど触れたように粗利益率が非常に高く保てているということは、「高くても選ばれるブランド」になりつつある、ということの裏返しだと考えられます。
そして、この「プレミアム路線」が今、とくに力を発揮しているのがアジアです。ランニングやウォーキングを健康習慣として取り入れる人が増えているのに加えて、シンプルでミニマルなデザインが都市部のファッション感覚とも相性が良く、「走るときも、街歩きのときも同じ一足でいい」というニーズにうまくはまっています。
そんなOnがどのようにアジアで人気を広げているのか、中国・日本・韓国を中心に見ていきましょう。
アジアで広がるOn ——— 中国・日本・韓国
Onの最新決算資料によると、アジア太平洋(APAC)地域の売上は、為替の影響を除いたベースで前年同期比100パーセントを超える伸びとなり、四半期ベースで四期連続の3桁成長を達成しました。同じスポーツシューズでも、欧米市場が伸び悩むブランドが増える中で、Onはアジアでの勢いが目立っています。
なかでも中国は、今後のOnにとって非常に重要な市場として位置づけられています。専門メディアの分析では、中国のランニング人口の増加や健康志向の高まりを背景に、Onの売上が急速に拡大していると伝えられました。
上海や成都などの大都市ではフラッグシップストアやショップインショップの展開が進み、オンラインとオフラインを組み合わせながら、ブランドの世界観を伝える取り組みが強化されています。会社側は、中国だけで全体売上の1割を占めるような規模感を中期的なイメージとして持っていると紹介されることもあり、アメリカとヨーロッパに次ぐ「第三の柱」として育てている段階だと言えそうです。
日本でも、Onの存在感は年々増しています。原宿・キャットストリートには「On Store Tokyo Cat Street」というフラッグシップストアがあり、スイスアルプスをイメージした香りのする試着室や、創業者たちがアイデアを語り合った岩を再現した3Dプリントのオブジェなど、遊び心のある作りになっています。2025年には銀座にも「On Flagship Store Tokyo Ginza」がオープンし、原宿と銀座という東京でも特にファッション感度の高いエリアに二つの拠点を構える形になりました。
直営店以外にも、スポーツ量販店や百貨店、セレクトショップなどでの取り扱いが増えており、公式のストアマップを見ると全国各地に販売店が広がっています。
東京・原宿の店舗には常に行列ができている、といった口コミもあり、日本でも「ちょっといいスニーカー」として、ランナーだけでなく街歩き目的のユーザーにも浸透しつつあるようです。普段スニーカーにあまり興味がないという方でも見かける機会は増えてきたのではないでしょうか。
韓国では、まさに2025年11月に初の直営店がソウルでオープンしました。場所は、話題のショップが集まる百貨店「The Hyundai Seoul」と、観光客にも人気のロッテワールドモール蚕室店です。両店舗とも、ランニングやトレーニング用のシューズだけでなく、テニスや日常使いのウエア、キッズ向け商品までフルラインアップを扱うと発表されています。
ソウルの店舗については、Onの公式サイトでも「スイスらしいミニマルなデザインを、成長著しい複合施設の中に持ち込んだ」と紹介されていて、単にモノを売る場所というより、ランニングイベントやコミュニティづくりの拠点としての役割も持たせていることがうかがえます。
数字で整理すると、APAC地域はまだ通期売上の2割に満たないものの、売上成長率は3桁、アパレルカテゴリーも9ヶ月累計で80%以上の増収となっており、今後のOn全体の成長を牽引する「第2、第3のエンジン」として期待されているポジションだとイメージしていただくと分かりやすいと思います。
最後に、他の大手ブランドと比べたときの違いや、Onがこれからどんな方向を目指しているのかを、発表資料などを手がかりに少しだけのぞいてみましょう。
Onが描くこれから
スポーツ・ファッションの世界には、ナイキやアディダス、ルルレモンといった巨大プレーヤーがひしめいています。その中でOnは、規模こそまだ小さいものの、彼らとは異なる路線で着実に成長をしています。Onの柱戦略は大きく3つあり、この戦略ベースで成長を遂げていくと見られます。
一つ目は、価格戦略。多くのブランドが在庫調整のため、セールや値引きを繰り返すなかで、Onは「プレミアムブランド」として、フルプライス販売を重視する姿勢を崩していません。実際、関税の影響で仕入れコストが上がった局面でも、価格への転嫁を行い、それでも需要が強かったと報じられています。これは、「値下げ合戦にはあまり参加せず、ブランド力で勝負する」という方向性を示していると言えるでしょう。
二つ目は、チャネル戦略です。Onは自社のオンラインストアやフラッグシップストアといった直販チャネルを伸ばしつつ、一方でスポーツショップや百貨店など卸売先との関係も大切にしています。最新の決算では、直販チャネルと卸売のどちらも二桁成長を達成しており、どちらかに偏るのではなく、両輪で成長させていく姿勢が見て取れます。
これに対し、ナイキはここ数年、自社のECや直営店に比重を移しすぎたことで、伝統的な小売パートナーとの関係見直しに追われていると指摘する記事も出ています。ルルレモンは、北米の需要鈍化と関税コストの増加が重なり、2025年には業績予想の下方修正と株価の急落が相次ぎました。
三つ目は、成長分野の組み立て方です。Onはもともとランニングシューズの会社というイメージが強いですが、直近の決算ではアパレルやアクセサリーの売上が前年から大きく伸びています。アパレルは為替の影響を除くベースで売上が倍増し、アジア太平洋地域も同様に3桁成長を続けていると公表されています。シューズだけでなく、ジャケットやランニングタイツ、日常使いのウエアまで含めた「トータルなスポーツ・ライフスタイルブランド」としてのポジションを狙っていることがうかがえます。
こうした動きを踏まえると、Onの今後の方針は比較的シンプルです。ひとつは、プレミアムブランドとしての立ち位置を守りながら、東京やソウル、中国の主要都市などに構えた直営店を「世界観を体験できる拠点」として育て、ランニングイベントやコミュニティづくりを通じてファンとのつながりを深めていくこと。もうひとつは、CloudTecをさらに進化させたソール構造やリサイクル素材の活用など、技術面とサステナビリティへの投資を続け、「高くてもこのブランドを選ぶ理由」を増やしていくことです。
規模の面ではナイキやアディダスにはまだ届かないものの、プレミアム路線、アジアでの急成長、直販と卸のバランス、アパレルやアクセサリーへの広がりといった要素がかみ合っていて、「小型だけれどストーリー性の強い存在」として注目されている、というのが現在のOnの立ち位置だと言えそうです。
これからアジア発の成長ストーリーがどこまで続いていくのか、しばらくはOnにいっそう注目が集まりそうですね。
参考文献
On Holding AG
「On Reports Results for the Third Quarter and Nine-Month Period Ended September 30, 2025」
On Investor Relations(2025年)
https://investors.on-running.com/financials-and-filings/financial-releases/news-details/2025/On-Reports-Results-for-the-Third-Quarter-and-Nine-Month-Period-Ended-September-30-2025/default.aspxOn Holding AG
「On presents Q3 Results 2025」
On Investor Relations – Presentation PDF(2025年)
https://investors.on-running.com/files/doc_financials/2025/q3/2025-12-11_On-presents-Q3-Results-2025_EN-final.pdfNIKE, Inc.
「NIKE, Inc. Reports Fiscal 2025 Third Quarter Results」
NIKE Investor Relations(2025年3月20日)
https://investors.nike.com/investors/news-events-and-reports/investor-news/investor-news-details/2025/NIKE-Inc--Reports-Fiscal-2025-Third-Quarter-Results/default.aspxOn Running
「On Flagship Store Tokyo Cat Street」On 公式サイト(店舗紹介ページ)
https://www.on.com/en-kr/explore/stores/tokyo-catstreetMarketWatch
「S&P 500 Textiles, Apparel & Luxury Goods Industry Index(SPZ57)」
MarketWatch – Index Overview(2025年)
https://www.marketwatch.com/investing/index/spz57
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