Weekly Bites Vol.13へようこそ!
今週の気になるトピックは、アップル、米国で金利4.15%の預金サービスを開始。めちゃくちゃすごいけど一体どういうわけ?です!
目次
#気になるトピック
#アップル、米国で金利4.15%の預金サービスを開始
Appleが全米の平均金利の10倍を超える、4.15%の金利で貯金口座サービスを開始するとの発表がありました。早速アップルの記事をみてみましょう。
”Starting today, Apple Card users can choose to grow their Daily Cash rewards with a Savings account from Goldman Sachs, which offers a high-yield APY of 4.15 percent — a rate that’s more than 10 times the national average. With no fees, no minimum deposits, and no minimum balance requirements, users can easily set up and manage their Savings account directly from Apple Card in Wallet.”
要するに、
Apple Card利用者向けに年利4.15%の預金サービスを開始
米ゴールドマン・サックスと提携し、彼らの預金口座を利用
4.15%の年利は、全米平均金利の10倍を超える
Apple Walletのアプリから管理可能
上限$250,000まで利用可能かつFDIC(アメリカ連邦預金保険公社)が預金を補償する預金保険を提供
普通預金サービスは手数料無料で提供され、最低入金額・最低残高は設定されないとのこと
アメリカ居住者に限定
という内容。
多分みなさんが一番気になるのは、年利4.15%、この高い利率をなぜアップルは提供できるのかという点ですよね。日本では依然、超低金利が続いていて、銀行にお金を預けたとしても、0.002%とかしかないですよね?じゃあ、なぜアップルはこんなことができたのでしょうか。詳しくみてみましょう。
まずは、Appleの発表した年利4.15%、これが本当に全米平均金利の10倍を超えているのかを確認してみましょう。
Federal Deposit Insurance Corporation (アメリカ連邦預金保険公社)のこちらを見てみると、National Deposit Rates 0.39%と記載があり、4.15%というのは確かに全米の平均金利の10倍以上の水準です。
不思議ですよね。そうなると、アップル以外にも4.15%の利率を出してるところが他にあったりするのでしょうか?
こちらのサイトをみましょう。
Best high-yield savings accounts in April 2023
PNC 4.3%
Citizens 4.25%
SoFi 4.0%
Cit Bank 4.75%
Bask Bank 4.65%
実は、4%を超える年利を出してる銀行ってアップル以外にも結構あるというのがわかります。
でも正直、ちょっと聞いたこともない銀行も多いので、信用して良いのか戸惑いますね。例えば大手のJPモルガンとかはどうなんでしょう?
こちらを見てみると大手銀行のJPモルガンは0.01%しかありません。え?なんでこんなに違うのでしょう??他にも、大手銀行はまだまだ金利が低いようです。なので、先ほどの全米の平均金利は0.39%程度に留まっているのです。
一体どういうことなのでしょう。これを理解するためには、銀行のビジネスを少し理解する必要があります。
先週JPモルガンの決算の話をWeekly Bitesで話したのですが、その中にあった”Net Interest Income"(純金利収入)って、みなさん分かりますでしょうか。
ちょっと先週の内容を振り返ってみましょう。
”純金利収入とは、融資から得られる収入から、銀行が預金者に支払う利息を差し引いたものです。通常、金利が上がれば、銀行にとっては企業などへお金を貸す際の貸出金利が上がり、一般の預金者への預金金利はあまり上げずに済むので、良いことずくめです。
SVBや地方銀行の最近の破綻は、JPモルガンにとってはプラスに働いているようです。NY Postによると、彼らはSVBの顧客のほとんどを引き取り、顧客としては安全な場所に逃げることができるので、わざわざ預金金利を上げる必要がなかったということなのです。”
weekly bites Vol.12 より
このように、JPモルガンは良い決算を発表し純金利収入が昨年比49%も増えたわけなんですが、実際みてみると、今のところ、一般の預金者への預金金利は0.01%しか払わないようなのです。
では、4%以上払ってる銀行は一体どうやって儲けてるのか。気になりますよね。
US Treasury Billってご存じでしょうか。トレジャリービルやT-Billsとも呼ばれる、アメリカ合衆国政府が発行する米国財務省短期証券のことで、償還期限が1年以内の短期国債をいいます。具体的には、利払いがない代わりに額面から割引された価格で発行され、償還時に額面で返ってくるという割引債です。その種類には、4週間物(1カ月)、13週間物(3カ月)、26週間物(6カ月)、52週間物(1年)などがあります。このレートをみてみましょう。答えはきっとここにあるはずです。
これを見て分かりましたでしょうか?
もうちょっと掘り下げてみましょう。
Weekly Bites! Vol.7でも紹介しましたが、銀行の資産と負債は図のようなバランスシートの関係になっています。
ここでシリコンバレーバンク(SVB)が破綻した理由を思い出してください。
シリコンバレー銀行にお金を預けていたほとんどの顧客がスタートアップや、ベンチャーキャピタルで、みんな同じタイミングでお金を引き出そうとした。
シリコンバレー銀行はお客さんから預けていたお金を長期国債や債券で運用していたので、金利が急に上がってしまうと債券の価値が大きく下がった。
という二つの理由が主な原因で破綻に追い込まれたのでした。
今回、アップル(実際はゴールドマン)は顧客が預ける預金に対して、4.15%の利子を払わないといけません。これは、銀行からみると、短期で出金可能な流動負債、つまり預金者がすぐに引き出せてしまうお金なので、銀行としては、目先のお金を確保するために短期の債券で運用しなければならないということになります。つまり、簡単にいうと、ほとんどUS Treasury Bill(先ほどの米国政府が発行する償還期限が1年以内の割引債)で回さなければならないということになります。現在のTreasury Billの金利は4.9%程度とのことですので、ゴールドマンはこの差額で儲けることができるのです。ただ、FED(米国の中央銀行)が金利を下げ始めたら、顧客に対する金利(現在4.15%)も下げないといけないとも考えられます。
これで、ゴールドマンがこの金利設定でも差額で儲けることができるというのは理解できました。でもなぜ、アップルはこんなことをやるのでしょうか?アップルはiPhoneと関連アプリを通して人々のライフスタイル全てに関わりたい、つまりiPhoneエコシステムをもっと広げたいと考えています。2014年からApple Pay、そして今年発表した後払いサービス(BNPL)など、Fintech領域に積極的に関わろうとしています。
今回のアップルカードに連携出来る貯金口座も、お金の周りのユーザー体験をさらによくすることで、短期的な利益よりは長期的にApplePay, AppleCardを含め、iPhoneのエコシステム全体を大きく広げ、最終的にそのエコシステム内に利用者を取り込むことが目的だと個人的にはみています。
では、株価への影響はどうだったのでしょう。先ほど話した通り、短期的にはAppleとゴールドマンの株価には大した影響はないと思います。
今のところ、そもそもアップルのクレジットカードを持ってる人のみが対象になりますし、クレジットカードを作らなくても4%以上の金利がもらえる銀行って実は沢山あるので、どちらかというと、すでにカードを持っている人が、キャッシュバックにさらに利息がつくというのでアップルカードをより使うようになるというのに意味があるのではないかと思います。長期的にはApple Pay、Apple Card、後払い決済など、決済周りが全てアップル内で簡単に解決し、高い金利ももらえるので、このエコシステム内で活動する人が多くなり、たとえば競合である、スクエア( $SQ )とかの方はリスクが高まるかも?とは見ています。
ちなみに、日本でもアップルカードが使えるようになって4.15%の金利をもらえるといいのにって思う方もいらっしゃるかもしれないですが、現在、日本の短期金利はマイナスで、アップルカードが使えて貯金口座が作れるようになったとしても金利は高くならないはずです。4%の利回りが欲しいなら、短期の国債ETFがあるので、そちらを検討するとよいでしょう。
#Company Updates
Woodstock University インターンシッププログラムが始まりました!
クリエーターズプログラム ウェイトリスト登録を開始しました!
登録はこちらから→https://woodstock.club/press/creators-program
アプリの新バージョン1.1.13をリリースしました!
今回のリリースで新しくなった主な点は、以下の通りです。
People セクションに新規ユーザー順のタブを追加しました。
Peopleセクションの表示を、P&Lランキングに加え、取引数順、エンゲージメント数順でも表示するよう変更しました。
UI/UXの改善を行いました。
その他いくつかのバグを修正しました。
#みんなのトレード
Woodstock.clubアプリ上で、先週(4/16-4/22)売買された銘柄ランキングはこれだ!
#直近の決算
いよいよ決算シーズン本格化!ここではwoodstock.clubで取り上げたいくつかの決算のまとめについて改めて、ご紹介しておきます。(BEAT!は、決算が予想よりもよかった時、MISS...は予想より悪かった時、INLINEは予想通りだった時をそれぞれ意味しています。)
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