Weekly Bites Vol.19へようこそ!著者のブライアン・ユンです。今週の気になるトピックは、AIと半導体の関係性についてです。
目次
#Company Updates
#今週の気になるトピック“AIと半導体の関係性”
#みんなのトレード
#直近の決算
#Company Updates
アプリの新バージョン1.1.25をリリースしました!
今回のリリースで新しくなった主な点は、以下の通りです。
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UI/UX の改善を行いました。
いくつかのバグを修正しました。
#今週の気になるトピック
“AIと半導体の関係性”
まずは、世の中のお父さん方、少し遅れましたが父の日おめでとうございます👨🏻👏
始める前に、念の為ですが、私たちの配信しているコンテンツは投資のアドバイスではなく、ここで述べることはすべて筆者ブライアンユンの個人的な意見と調査に基づいており、Woodstockの見解を代表するものでもありません。個人的にポジションを保有している可能性もあります。WeeklyBites!に掲載されている内容は、あくまで情報提供のみを目的としていますのでその点ご理解ください。
というわけで、先週もAIと半導体業界ではビッグニュースがありました。
AMDのCEOであるLisa Suが、大規模言語AIモデル向けに作られた新しいチップMI300Xを発表しました。Nvidiaの発表の際は株価は大きく上がりましたが、今回のこの発表の際は、プレゼン中にも関わらず株価が下落し、市場をがっかりさせました。投資家たちは、AI競争でAMDがNvidiaに追いつくのは難しいと感じたのでしょう。今回は、AIに関連する半導体業界を紐解くことで、この環境下でNvidiaが強い理由や、AMDのようにそこに競争を挑んでいる会社にとってそれがどのような意味があるのかを深掘ってみましょう。
その前に、ここで面白い事実を紹介します。
AMDとNvidiaが激しい競争相手であることは明らかですが、興味深いことに、この記事によると、NvidiaのCEO兼共同創業者のジェンセン・フアンは、実は競合するAMDのCEOリサ・スーの「叔父」なのだそうです。どうやらLisa Suの祖父とJensen Huangの母親は兄妹のようです。
https://www.techtimes.com/articles/253736/20201030/fact-check-nvidia-ceo-uncle-amds-dr-lisa-su.htm
確かにこのレザージャケットの着こなしは似てますね、どうでしょう?
ジェンセンと彼のチームが破綻寸前だったNvidiaを救い(詳しくはWeekly Bites!Vol.16参照)、今や1兆ドル企業になったように、リサ・スー氏はシリコンバレーの歴史上最も素晴らしいターンアラウンドを指揮したことで有名です。2014年にSu博士がAMDのCEOに就任したとき、同社の株価は2ドル前後で取引されていて、時価総額はインテルが1兆6000億ドルなのに対して、約30億ドル程度でした。当時、誰もがこの会社はもう死んだと思っていました。9年後の今、同社の時価総額は1900億ドルを誇り、インテルの1500億ドルよりも大きくなっています。私はシリコンバレーでこれほどの復活劇を見たことがありません。リサ・スーは、ビジネス界で最もパワフルで革命的な女性の一人としてよく名前が挙がります。リサ・スーは、ビジネス界で最もパワフルで革命的な女性の一人としてよく名前が挙がりますが、彼女の話については、今後のエピソードにとっておくことにしましょう(笑)
さて、AMDのAI向け新型チップの発表に話を戻します。彼女のプレゼンの7分動画はこちらです。MI300xは2023年末に発売される予定とのことです。
プレゼンの中で彼女は、なぜこの、より高速なメモリとトランジスタを兼ね備えた新しいチップが、大規模な言語モデルのトレーニングに最適であるのかについて説明しています。そしてさらにこのチップは、競合製品(Nvidia H100)と比較して、モデルのトレーニングに必要な性能を高速化し、コストを削減することができると強調しています。
また、このように続けています。生成モデルの規模が大きくなるにつれて、モデルを実行するために必要なGPUの数を減らすことがますます重要になってきますが、AMDは1つのチップで大容量メモリを提供するため、その数を減らすことができるのです、と。そしてプレゼンの最後には、AMDは開発者をサポートするためのソフトウェアスタックで多くの進歩を遂げ、パートナーやコミュニティと取り組んでいるオープンソースソフトウェアスタックへもコミットすることを確約しました。
このAMDの発表をどう受け止めればいいのでしょうか。
その前に、一歩引いて、これらのチップがAIモデルに対してどんな役割を果たしているのかを振り返ってみましょう。これらは並列計算のために使われています。Weekly Bites!Vol.17では、Nvidiaが科学的コンピューティングというチャンスに遭遇し、ゲーム事業からフォーカスをこの分野に移して、多額の投資をしたことをお話ししました。おそらくジェンセンさえも、この市場がいつかどれほど大きくなり、GPUによる一般的なコンピューティングがニューラルネットワークモデル(ニューラルネットワークはAIモデルの基礎)のトレーニングにとって非常に重要になるということを、当時は知るよしもなかったでしょう。Nvidiaが10年以上かけてハードウェア、ソフトウェア、開発者エコシステムを構築していなければ、今日我々が享受している大規模なジェネレーティブAIモデルは実現しなかったと言っても良いかもしれません。
現在、AI市場は間違いなく加速するコンピューティング(演算処理)とデータセンターのインフラに対する多くの需要を生み出しています。Nvidiaは、FY23のQ4の決算プレゼンテーションで、AIエンタープライズソフトウェア市場を1500億ドルの機会と推定し、Dr.Suも同じ推定を見せて、2023年の3000億ドルのマーケットからその後4年間のCAGR(年平均成長率)が50%以上で成長するとしています。
さて、市場は非常に大きく、今は NvidiaがAIチップ市場を独占していて、 AMDはその一部を狙っているという状況です。その上でAMDの発表をどう受け止めるべきか。要点を分析してみましょう。
まず、AMDは自社のチップがより多くのメモリとより多くのトランジスタを搭載することで、モデルの展開に必要なGPUの数を少なくすることができると述べています。これは非常に良いニュースだと思いますが、もちろんNvidiaもじっとしているわけではなく、より新しいチップを投入してくるでしょう。前回のNvidiaのエピソードを振り返ってもらえると、彼らは新しいチップをかなり速い速度で出荷していることがわかります。このAMDのMI300Xがローンチする前にも、新しいチップを投入してきても不思議ではありません。
次に、AMDはソフトウェアスタックの重要性を理解し、オープンソースのフレームワークでも大きく前進したとのことですが、具体的にどこまで進んだのか、また、具体的な顧客についての言及もありませんでした。ではなぜ、これが重要なのでしょうか?
Weekly Bites!Vol.16では、MicrosoftのDirectXがグラフィックス開発の基準プロトコルとなったため、Nvidiaのプロトコルを選択する開発者がいなくなり、初期のフェーズにおいてNvidiaがほぼ壊滅的な状態になってしまったことについてお話ししました。ゲーム開発者がDirectXライブラリを使ってゲーム用のグラフィックス群を開発したのと同様に、AI開発者は現在、NvidiaのCUDAソフトウェアを使ってコードを書き、ハードウェアにアクセスしています。つまりハードウェアへのフレンドリーなアクセスレイヤーと考えることができます。
Nvidiaは、開発者向けにこのソフトウェア・エコシステムを何年もかけて構築しており、モデルの訓練とテストをすぐに行いたいAI企業の顧客リストをすでに大量に持っています。この顧客向けのソフトウェアキットは、彼らのモデルを迅速に展開していくことを可能にするのです。NvidiaはFY23Q4のプレゼンテーションで、このエコシステムがもたらす相乗効果(フライウィール)について説明しています。つまり350万人もの開発者がすでにCUDA(同社のソフトウェアスタック)を使ってアプリケーションを構築し、それが世界中の業界を超えた35,000もの会社で使用されている状況で、多くの企業が使うことでまた開発者が流入し、そのサークルがぐるぐる回っていくのです。このエコシステムを倒すのは現時点ではかなりハードルが高いと思われます。Appleのソフトウェア開発者キットのようなものを想像していただければと思います。
果たして、AMDにこの市場を勝ち取るチャンスはあるのでしょうか?まあ、ひとつだけ確かなのは、リサ・スーは戦わずして諦めるようなリーダーではないというです。株価が2ドルのときに会社を立て直せたのなら、もう一度奇跡を起こせるかもしれません。
ROCmというのが、AMDのGPUプログラミングのためのソフトウェアスタックです(NvidiaのCUDAのようなもの)。AMDのアプローチで興味深いのは、CUDAがNvidiaの独自の技術であるのに対し、AMDはROCmをオープンソース化することを選択した点です。なぜAMDはこのコア技術をオープンソース化することにしたのでしょうか?
競合他社がすでに独自のソフトウェアで市場においてネットワーク効果を発揮している中、市場参入が遅れながらもエコシステムを迅速に構築しなければならないという場合、どうするのが良いでしょうか。それこそが、開発者やコミュニティにオープンソースを広く提供することなのです。その好例が、アップルのiOS(モバイル・オペレーティング・システム)とグーグルのAndroid(アンドロイド)です。GoogleはAndroidの買収によってモバイル市場に参入しましたが、市場参入自体は遅いタイミングでした。しかし、オープンソースのOSを持つことで、携帯電話メーカーがAndroidバージョンを作って自社のデバイスとして展開することを可能にできたのです。こうしてGoogleは、モバイルOSとして使われるようになったのです。
この戦略はAMDにも有効なのでしょうか?AMDがAIコミュニティを巻き込んでオープンソースのソフトウェアスタックを採用してもらうことに成功するかどうかはわかりませんが、もし成功すれば、AMDはAIの市場シェアを獲得する大きな可能性を持っていると言えるでしょう。
ここで、OpenAI、Microsoft、Metaのように、AIチップをNvidiaに大きく依存している企業の視点から考えてみましょう。彼らは価格競争を望んでいるのでしょうか?もちろんです。彼らには、
1)長期的な計算ニーズに応えるために独自のチップを開発したい
2)その間にNvidiaに競争を促し、コストを低く抑えたい
という思いがあります。ですから、たとえAMDのチップがそれほど強力でなくても、彼らのソフトウェアが少なくとも「使える」ものであれば、これらの大手技術企業は、少なくともAMDになんらかのビジネスを提供すると思います。
現在、Nvidiaの時価総額は、AMDの時価総額の約5倍もあり、これは同社の将来的な展望によるところが大きい状況です。Nvidiaの時価総額は妥当なのでしょうか、それともAMDが割安なのでしょうか。はたまた、そもそもAIは非現実的な期待を抱かせるほど過熱してしまっている状況なのでしょうか?AI市場は、本当に私たちが期待するほど大きいのでしょうか?
これらは、私たちがまだ答えを持っていない質問ですが、AI産業が私たちの期待通りに大きくなるとすると、AIハードウェア市場は勝者が総取りするような市場ではなく、第2のプレーヤーの余地があるはずだと私は考えています。
余談ですが、バリューチェーンには、AMDやNvidia、あるいはここ数回のエピソードでかなり徹底的に議論したTSMC以外にも、多くの半導体企業が存在します。Appleが新たに発表したVision Proでさえも、半導体を多用しています。今後のエピソードでは、半導体のバリューチェーンについてより深く掘り下げてお話する機会もあるかもしれません。
半導体のバリューチェーン: どのプレーヤーが何をしているのか?この記事では、エコシステムについて説明し、各セグメントの役割について解説しています。
https://semiwiki.com/eda/307494-the-semiconductor-ecosystem-explained/
今日のエピソードは以上です。今日の内容が気に入ったら、いいね!や返信をぜひ!毎週これを書くモチベーションの維持にとても役に立つのです(笑)
#みんなのトレード
Woodstock.clubアプリ上で、先週(6/12-6/18)売買された銘柄ランキングはこれだ!
#直近の決算
ここではwoodstock.clubで取り上げたいくつかの決算のまとめについて改めて、ご紹介しておきます。(BEAT!は、決算が予想よりもよかった時、MISS...は予想より悪かった時、INLINEは予想通りだった時をそれぞれ意味しています。)
ORCL 0.00%↑ Beat / Beat
https://twitter.com/woodstockclub/status/1668374075918667776
ADBE 0.00%↑ Beat / Beat
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いつも素晴らしい記事を届けてくださりありがとうございます。
チップの戦いはすごいですね。Nvidiaもじっとしているわけではなく、もっといいチップを投入!そしたらまたLisa氏がもっといいチップができると述べるかも。これが成長になるんですね!!
戦いが熾烈すぎる時は、インテルの工場の上空写真でも見て、深呼吸します。笑
皆さんの感想を聞かせてください!